研究課題/領域番号 |
20K02782
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
山下 浩之 岡山理科大学, 教育学部, 講師 (10781099)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自然災害 / 3つのモデル / 基礎的な知識 / 基礎的な原理 |
研究実績の概要 |
平成29年学習指導要領では小学校理科に新設された内容に,自然災害に対する「防災」がある.「防災」は自然科学的な観点からだけでなく社会科学的な面からの検討や応用も密接に関係させながら,総合的な自然災害への防御を行うことが最大の使命ではある.しかし自然災害から被る人的・物的な被害の原因や原理の追究は自然科学が担う領域であり,理科の目標の下の基礎的な観点から構成すべき内容である.したがって本研究では,理科学習が担う防災教育の,特に地学的観点からのモデルの開発と評価を取り扱う. 自然災害に関する基礎的な知識や原理は,主に小学校5年生の単元「流水の働き」や小学校6年生の単元「土地のつくり」で扱う.しかしながら自然災害は地域の特殊性は大きく,その地域に見合った「防災教育」の構築がどうしても必要である. そこで災害時のモデルを3種類作成し,それぞれビジュアルモデル・イメージモデル・時間操作モデルとして,教材としての有効性を検討する.これら3つのモデルは防災に必要な科学的な基礎的な知識に誘導するモデルであり,最終的には災害時の独自の判断を迫られる応用的な局面での行動で試されることになる.3つのモデルは小学校校区を単位とした地域の実態を基に,どのような危険性が考えられるのかを十分に検討しながら学習に適用される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自然災害は現在においても日本列島各地で生じていることから,本研究の成果は緊急性を帯びている.例えば令和2年7月豪雨では熊本県球磨川が氾濫し,支流脇にある特別養護老人ホームが水没し,入所者14名が亡くなった.本来ならば現場での検証を行い,どのような地形や天候のもとでどのような被害が生じたのかを考察すべきであったが,コロナ感染症予防のために球磨川地方はボランティアを含め,県外者の受入を行うことができなかった.これは球磨川地方だけでなく,令和2年7月豪雨で被災した全ての地域で同様の措置が取られた.なお,この状況は今後も続くとみられており,災害の現場から学ぶ材料が極端に制限されている現状は受け入れるのみである.
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今後の研究の推進方策 |
実際の災害現場での検証は時期を見て行うが,モデルの開発は既に行われつつある.岡山県で重大な被害が生じた平成30年7月豪雨をモデルにして,様々なケースでの流速測定を計画している.例えば水位が増した場合の流速の定量的な変化や本流と支流が合流する地点での流速の変化,網状河川のような本流から分流する地点での流速の変化,摩擦が大きい礫河川での流速と摩擦を開放した場合の流速との比較,同様に河床が植物によって摩擦が生じている場合と摩擦を開放した場合の比較などである.さらに流水を人工的に作る場合の勾配による定量的な流速の比較や,人工モデルに適当かつ流水確保が可能な場所の選定と成立するための条件整備などにも言及する予定である. 最終年度はさらにこれらのモデルを実践的に使用した場合の教育的な評価を計画しており,今年度はそのための基礎的データを蓄積することに専念する.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は被災地の現地調査を十分に行うことができなかったため,旅費その他の予算を活用することができなかった.今年度は昨年度の配分も含めて被災が生じた各地における十分な調査を行うとともに,動画・画像を含め正確な記録を残す.また,流速と濁度との関係性についても言及するため,濁度計の購入も視野に入れている.成果は学会等で発表を行い,批正を受け入れると同時に,教育的な成果が学校現場で共有かつ敷衍できるように何らかの形で出版することを考えている.
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