研究課題/領域番号 |
20K02782
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
山下 浩之 岡山理科大学, 教育学部, 講師 (10781099)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自然災害 / 被害の実態 / 基礎的な知識 / 基礎的な原理 |
研究実績の概要 |
過去の災害の原因とその状況についてデータの収集を行うと同時に,実際の河川の様々な状況における流速測定データの収集を行った.過去の災害は令和2年7月豪雨を取り上げ,中でも特に球磨川災害の実態を中心に被害の状況調査を詳細に行った.球磨川は延長約100 kmを超える一級河川であるが,同じ一級河川で延長がほぼ等しい,平成30年7月豪雨で真備町を襲った高梁川と比較すると河床断面形が極めて異なることがわかった.球磨川は人吉市内から肥薩火山帯にぶつかると北西方向に流路を変えるが,下流まで60 km程川幅をほぼ一定に保ちながら蛇行し,しかもほぼ直線的に流れ下る.その中で特徴的な被害が生じた場所がいくつかある.それらの中に十数名の犠牲者が出た球磨村渡地区と人吉市内および八代市坂本町がある.前者は真備町での被害と同様に川幅が狭隘になる部分の上流側にある場所である.これにより渡地区は渡駅前の標高から5.7 mまで水位があがっている.しかし実際には支流である小川が極めて多くの土石流堆積物で排水が困難になったことが推測される.小学校では土石流は扱わないが,流水の働きが防災と極めて強く関連づけて指導することになっている現在,土石流の影響を受ける地域が存在することは留意する必要がある.また,人吉市内西側の中神町から大柿,地下にいたる蛇行部分は流速が増すに連れて直線的な流路と変化し,蛇行部の中央部を浸食した.小学校の教科書では攻撃斜面は浸食され る実験が掲載されているが実際に流量が増し流速がそれに伴って急激に増した場合は直線的に流向を変えて蛇行部の中央部を流れ,浸食することを示す必要がある.さらに坂本町では,攻撃斜面だけでなく滑走斜面も被害が大きい.これは土石流の影響に加え,流水は複雑な乱流となっていると推測され,小学校の教科書には原理の典型例を挙げるだけでなく大量の流水の影響も掲載を検討する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在,令和2年7月豪雨のデータの分析を行っており,このデータがこれから検討するモデル作成や授業プログラム作成に大きく影響することになる.このデータを精緻に分析することによって,より具体的な視点が明らかになり,研究が進み易くなるものと思われる.また,流水での流速測定も順調にデータが取れており,今後梅雨前線が発達する季節においても流速測定の機会が得られるものと思われる.また,実際のプログラム立案についてもいくつかのプログラムはまとまりつつある. 以上のことから概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
精緻なデータ収集から,授業のプログラム作成とモデルの充実を進めていく.また,大学生を児童に見立てて,流速測定を行う際の視点を検討したり,防災教育に直結する視点を明らかにしたりする計画も立てている. さらにこれらをまとめ,日本地学教育学会や国際学会に発表し,批判を受けながらよりよいモデルの構築を行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度,2021年度とコロナによる影響で現地調査による出張および教育関係者等との交流が限りなく制限され,研究の進行が滞ったことが次年度使用額が生じた最大の理由である. ところが2022年度はコロナ禍から全面的には開放されたわけではないため,防災関係の現地調査や被災地でのデータを精緻に収集しながら,いつでも防災関係の交流や議論が可能な準備をしていく.例えばテーマに上げた3つのモデルの作成を現時点で行い,それらと実際の被害との関係が一般化されるかどうかを検討することにシフトさせていく.
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