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2020 年度 実施状況報告書

認知系・非認知系コンピテンシーを輻輳的に高める幼小接続カリキュラムの再構築

研究課題

研究課題/領域番号 20K02797
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

原田 信之  名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (20345771)

研究分担者 宇都宮 明子  島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (40611546)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードコンピテンシー / ビルドゥング計画 / 認知能力 / 非認知能力 / 統合教科カリキュラム / 事実教授 / 時間学習
研究実績の概要

コンピテンシー構築型カリキュラムの特色を有するドイツ16州の小学校学習指導要領を鳥瞰し、認知系コンピテンシーと非認知的コンピテンシーを構造的に配置するカリキュラムを有する州を突き止めた。その一つがバーデン・ヴュルテンベルク州の基礎学校ビルドゥング計画である。このビルドゥング計画のうち、統合教科「事実教授」のカリキュラムを対象に、統合教科固有のコンピテンシー(認知系コンピテンシー)の構成的な選択と配置のあり方を解読したうえで、その認知系コンピテンシーを非認知的コンピテンシーと合わせて結集させ、両者を輻輳的に育成するための連関性がカリキュラムとしてどのように構造化されているのかを解明した。換言すると、統合教科固有のコンピテンシーが、基礎学校ビルドゥング計画においてどのように配置されているのか、そして非認知系コンピテンシーを含む多様なコンピテンシー要素がどのように結集されて、いかに連関性を有する教科カリキュラムとして構成されているのか、という問題に迫った。
両コンピテンシーを輻輳的に育成するための連関性を具体的に明らかにするために、時間学習(「時間・変遷」の単元)における歴史学習特有の認知系コンピテンシーに着目した。同州の基礎学校ビルドゥング計画において、教科内容コンピテンシー(認知系)を示す章は「スタンダード」と位置づけられていること、従来の社会コンピテンシーや自己コンピテンシーなどの非認知系コンピテンシーに相当する2要素は学習プロセスコンピテンシーに内化させて育成する措置をとっていること、そのためにネットワーク化された知識を形成するための多様な連関措置をとっていることを解明した。
上記研究に先立ち、教える側の資質・能力解明のためにドイツ教授学における教師のビリーフ研究を対象に、教職専門性の深部に迫るコンピテンシー構成要素を解明する研究に取り組んだ。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ドイツ16州のコンピテンシー構築型カリキュラムを収集し、各州の基礎学校カリキュラムを比較・検討することで、認知系コンピテンシーと非認知系コンピテンシーの輻輳的・相互作用的な育成を図る州を特定した。その一つが、バーデン・ヴュルテンベルク州の2016年版ビルドゥング計画である。このビルドゥング計画を対象に、当初予定していた低年齢期の時間学習特有の認知系コンピテンシーの調査研究を実施することができた。本調査は、当初の計画においては、チューリンゲン州の『ビルドゥング計画0歳から18歳まで』を対象に実施する予定であったが、統合教科「事実教授」における認知系コンピテンシーと非認知系コンピテンシーの輻輳的・相互作用的な機能解明が優先されると判断したことから次年度の分析対象にした。この選択が有意に働き、当初予定した低年齢期における歴史学習(時間学習)のカリキュラムレベルでの解明を大幅に前進させることができた。このことは、当初計画していた低年齢期の歴史学習(時間学習)特有の認知系コンピテンシー(バーデン・ヴュルテンベルク州ビルドゥング計画では「教科内容コンピテンシー」)の調査・解明という研究課題に対し、同コンピテンシー「時間・変遷」の授業展開として、第1・2学年の展開例、第3・4学年の展開例として、2学年単位で示すカリキュラム水準でのコンピテンシーの発達原理の解明について、次年度の研究課題に引き継がれるものである。以上の研究は論文として公開されていることから、今年度の調査研究は順調に進展している。
研究分担者においても、歴史教授学の観点からの認知系コンピテンシーの文献調査は進捗しており、歴史学習特有のコンピテンシーおよびコンピテンシーモデルの理論レベルでの解明という本年度の研究課題に対し、いくつかの有力なモデルを突き止めることができている。

今後の研究の推進方策

就学前教育から後期中等教育修了時までの一貫カリキュラムを開発している州があるので、その州の学年・学校段階を超えた認知系コンピテンシーと非認知系コンピテンシーの系統的配置はどのようになっているのかを明らかにする。ここで重要になるのが、両コンピテンシーの輻輳的・相互作用的な機能をどのような育成モデルとして描いているかの解明である。そしてこの輻輳的・相互作用的な機能と低年齢期特有の融合型カリキュラムとをどのように一体化させてカリキュラムを編成しているかの解明である。さらには、その育成モデルを基盤にして、いかにシームレスなカリキュラムとして編成しているかの解明である。これらの解明のために、当初予定していたチューリンゲン州の『ビルドゥング計画0歳から18歳まで』を対象にして、年度前半に調査・分析する。年度後半には、認知系・非認知系コンピテンシーの輻輳的・相互作用的機能の解明による低年齢期特有の融合型コンピテンシーモデル開発を予定している。昨年度に予定していた現地調査研究は、コロナ感染状況拡大のために実施することができなかったが、引き続きその時期を見計らいたい。

次年度使用額が生じた理由

研究代表者、研究分担者の双方において、予定していたドイツ訪問調査が実施できなかったことによる。現地でのヒアリング調査に基づき購入予定であった文献や教材の購入ができなかったことにもよる。また、ヒアリング調査の内容を文字おこしするための謝金についても、ドイツでの現地調査自体ができなかったために執行できなかった。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] ドイツ初等教育「事実教授」における統合教科特有のコンピテンシーと連関性の可視化 ―バーデン・ヴュルテンベルク州ビルドゥング計画を対象に―2021

    • 著者名/発表者名
      原田信之
    • 雑誌名

      人間文化研究

      巻: 35 ページ: 85-104

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 教職専門性の深部に迫るコンピテンシー構成要素 ―ドイツ教授学における教師のビリーフ研究―2020

    • 著者名/発表者名
      原田信之
    • 雑誌名

      人間文化研究

      巻: 34 ページ: 29-43

    • オープンアクセス
  • [学会発表] コンピテンシー志向への実質的転換をめざす生活科教育の再構築―統合原理と接続原理の強化―2020

    • 著者名/発表者名
      酒井達哉・宇都宮明子・原田信之
    • 学会等名
      日本学校教育学会

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公開日: 2021-12-27  

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