研究課題/領域番号 |
20K02812
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研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
中島 憲子 中村学園大学, 教育学部, 准教授 (00301721)
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研究分担者 |
海野 勇三 愛知学院大学, 教養部, 教授 (30151955)
黒川 哲也 九州産業大学, 人間科学部, 教授 (50390258)
續木 智彦 西南学院大学, 人間科学部, 准教授 (60468791)
鐘ケ江 淳一 九州産業大学, 人間科学部, 教授 (90185918)
口野 隆史 京都橘大学, 発達教育学部, 教授 (60192027)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スポーツ・リテラシー / カリキュラム改革 / 体育 / 学びの履歴 / スポーツ観 / スポーツ価値意識 / 教員養成システム |
研究実績の概要 |
本年度(初年度)は新規調査を実施せず、調査票(学びの履歴測定バッテリー)の確定と、日本で実施した学びの履歴調査における年度比較、階梯比較を中心に協議を実施した。 学びの履歴調査票開発として、3次元(学習成果、学習への構え、教師の指導性)とした。学習成果次元は4因子(共同・共感、実践的知識・理解、運動有能観、楽しさ感得)各因子3項目全12項目で構成される。学習への構え次元は4因子(教えあい、規律順守、自覚的学習、献身)各因子3項目全12項目で構成され、教師の指導性次元は、6因子(学び方指導、肯定的相互作用、共感的雰囲気、認知的指導、学習規律、安心感)各因子4項目全34項目で構成された。 日本の階梯比較において顕著にみられたもののみを抜粋する。日本の小学校体育においては、2007年と2018年の比較から、学習成果(35.46→37.86)、学習への構え(35.25→37.50)、教師の指導性(70.28→75.34)の各3次元において増加が認められた。中学校体育(2010年と2018年)においても同様の傾向を示した。一方、高校体育(2010年と2018年)においては、すべての次元において顕著な変化は認められず、各因子においても横ばいや微増が多くを占めていた:学習成果(35.86→35.73)、学習への構え(34.68→35.13)、教師の指導性(70.45→71.71)。 以上のように、小学校および中学校の体育授業の平均得点が増加していたが、高校体育における変化は認められなかった。さらに、高校体育のみに「体育の愛好度(3.33→3.19)」および「体育の教科としての有用性(8.73→8.47)」得点においては、2010年よりも2018年調査が有意に低い得点を示した。このことから高校体育のカリキュラム改革の実態を丁寧に精査する必要が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年5月に提出した初年度の計画案では、すでに新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発出されていたため、当初の計画であった中学一年生を対象にした小学校体育授業の「学びの履歴」調査の実施を翌年(2021年度)に変更する予定としていた。そのため、平成29年~平成31年度「スポーツ・リテラシー教育における児童・生徒のスポーツ観形成に関する国際比較研究」における研究分析の追加検証を中心として、すでに調査済である「学びの履歴」調査(日本、韓国)の分析、「スポーツ観」調査(日本、韓国、台湾)の分析を中心に行なうこととなった。一方ジェンダー調査においては、ジェンダーに関する調査をプレ調査として大学生に実施する予定であったが、対面での質問紙調査が未実施となった。 また、台湾における「学びの履歴」調査を2020年度に実施予定であったが、現地の学校開校の状況に応じて、2021年実施の可能性を検討し、実施へ移す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はすでに調査済である「学びの履歴」調査(日本、韓国)の分析、「スポーツ観」調査(日本、韓国、台湾)の分析結果を中心に論文へまとめ、そこで上がってきた課題を今年度の分析視点に加えて協議をする予定である。また昨年度予定であったジェンダー調査においては、ジェンダーに関する調査(仮題)をプレ調査としてWEBにおける調査方法を新たに実施できる体制を整え、大学生に実施する予定である。 上記の流れの中の実態調査において得られたデータを受け、旧ナショナルカリキュラムのもとでついた力(学力)や問題点をさらに追及し、カリキュラムマネジメントの視点から総括的分析を試みる予定である。特に研究全体のスケジュール(調査の実施)に変更が生じ、研究計画を変更せざるを得ない。初年度当初すでに危惧していた調査依頼や分析結果会議のための最終協議等が台湾および韓国で実施できない可能性を踏まえ、大幅に予算を計上している「旅費」の部分が変更(先延ばし)させる可能性がさらに強まった。その際は研究が計画により近い範囲で遂行ように極力WEB会議等を実施することにより、外国の研究者とも密に連携をとる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
遅れている理由にも記載したが、最大の要因は新型コロナウイルス感染拡大による国内研究協議のための出張、台湾や韓国へ向けた調査依頼および研究協議のための出張が執行されなかったことである。それらをweb会議等に変更したことによって、予定使用額が次年度繰り越しとなった。そのため、計上していた研究協議用の旅費は今年度も最小限にとどめざるを得ず、今年度も計画通りの執行は難しく、さらに来年度への繰越しが考えられる。一方、各種調査実施については、新型コロナウイルスの拡大による体育授業の環境が大きく変化し、時期を変更せざるを得ないものと、そのまま実施可能なものがあるため、本来の計画に沿って遂行していく予定である。
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