研究課題/領域番号 |
20K02813
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
山本 奬 岩手大学, 教育学研究科, 教授 (90552612)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 不登校 / コンサルテーション / 教師支援 |
研究実績の概要 |
本研究は,不登校児童生徒を支援する教師のためのコンサルテーションの効果的な構成と展開を明らかにすることを目的としたものである。そこで得られた知見を「コンサルテーションシート」の形にまとめ、実践に付すことができる形で社会に提供し、心理職や教師による有益なコンサルテーションの実施につなげることをねらいとしている。実証的裏付けを備えた知見を実践可能な形で提供するところが本研究の特徴である。 2021年は,コンサルテーションの展開パターンの分類(研究1)に必要なコンサルテーション事例を18件実施し関係データを収集した。これらについて関係専門家の協力を得て,5つの視点から分析を行い,その要点を抽出した。得られた事例は昨年度実施分と併せて予定の1.5倍となり,抽出すべき事項に関し,理論的飽和の見通しが立った。 また,コンサルテーションニーズの把握(研究2)については,感染症拡大の影響から量的検討から支援対象者からの聴き取りによる質的検討に変更して実施した。不登校状態測定尺度の改善(研究3)に関する「学習に関する課題」尺度について,項目の収集と質的検討を経て暫定尺度を完成させたが,感染症拡大の影響から多変量解析に必要な調査を実施することができなかった。 これらの遅れを補い当初の目的を達するため,これまでに得た質的データの分析に基づき,予定通り不登校児童生徒支援コンサルテーションシート(研究4)の試作を完了させるとともに,本来は2022年実施予定であったコンサルテーション場面への適用を試み,対象者からの聴き取りを実施した。加えて支援対象教員からしばしば語られる学校文化の変容を検討するために,これを反映する不登校児童生徒の在籍比の変化を予測する非線形回帰式を開発した(発表は2022年)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コンサルテーションの実施に関しては,当初の予定を越えて実施することができ,その分析についても順調である。また,その質的検討の充実を背景に2022年実施予定のコンサルテーションシートの試行とこれに関する聞き取り調査を前倒しして行うことができた。加えて量的データに基づく予定であった研究の一部を質的データに基づくものに切り替えるなどの対応により感染症拡大の影響を最小限に留めることはできた。 しかし,本来実施する予定であった調査が完了しなかったことから,目的の達成に若干の支障が生じている。これらの進捗状況を総合し,「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
量的研究の一部を質的研究に変更することで,初期の目的の達成を図る。そのため,研究3年目もコンサルテーションを実施し,その充実を図る。「コンサルテーションニーズ」の測定尺度及び「学習に関する課題」に係る測定尺度の開発については,今後も対面による教員研修会等が実施できないことを想定し,その実施を図る一方で,教職大学院に学ぶ現職教員の大学院生等に研究協力を依頼するなどの方策についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点と関連施策により,教員研修会等量的データを得る機会が制限されたことにより次年度使用額が生じた。この滞りについては,効果的に研究協力を求めること,調査対象者を研究に支障のない範囲で変更することにより解決しようとするものである。同時に研究期間の延長についても併せて検討しながら,次年度使用額を使用する計画である。
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