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2022 年度 実施状況報告書

美術教育における「アート的身体」論を実装するパフォーマンスの実践/理論研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K02815
研究機関群馬大学

研究代表者

郡司 明子  群馬大学, 共同教育学部, 教授 (00610651)

研究分担者 茂木 一司  跡見学園女子大学, 文学部, 教授 (30145445)
井上 昌樹  育英短期大学, その他部局等, 講師 (10780471)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードアート / 身体性 / パフォーマンス / なって/みる / 美術教育
研究実績の概要

・本研究の理論に据えるパフォーマンス・アプローチ心理学について、UNSCIENTIFIC PSYCHOLOGY A Culture-Performatory Approach to Understanding Human Life の著者であるロイス・ホルツマンと本書の訳者らによる連続のオンライン講義に参加し、その内容理解を深めることができた。日本語と英語による対話を通じて、直接、ホルツマンとやりとりが叶うなかで、本書で重視する「アート」の捉えやパフォーマンスの可能性について、思考を深める機会となった。
・ボストン・チルドレンズ・ミュージアムに関する資料の読解をもとに、STEAM教育のあり方について考え、議論する学習機会を得た。日本でのSTEAM教育におけるアートは、科学的な思考との接続において、美的次元に基づき、根源的能動的な意欲を喚起する方向性を明確に打ち出す必要性がある。
・本研究の中核となるパフォーマンス・アプローチの具現化を図る「アルテナラ前橋2023ーつむぐー」(=0歳から100歳まで楽しめる読み語り/パフォーマンスの祭典)を実施することができた。12月より講座生を募集し、市民が表現の当事者になるべく7回にわたる講座(ダンサーや舞台演出家の講師招聘)を通じ、3月初旬に発表会当日を迎えた。当日は、地域及び都内からアーティストを招き、前橋文学館及びアーツ前橋を中心に前橋の街なかを舞台にパフォーマンス、造形ワークショップ、哲学対話など、多様な文化事業を展開し、総勢200名ほどの参加者を得て充実の会を催すことができた。講座生の達成感や充実感も窺え、今回の学習モデルをアレンジして学校教育に展開していくなど、今後の可能性につながる機会を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

・コロナ禍により、海外の視察(伊:レッジョ・ナラ=アルテナラ前橋の先行モデルとなる街ぐるみの語りの祭典、等)及び、予定していた国際学会での発表が叶わず、研究全体としては活性化に欠ける期間となった。職場状況の変化により研究外のエフォートが増したことから、予定していた論文執筆も見送るなど、研究次年度に向けて再度研究計画を立て直していく必要がある。
・本研究の理論の要となるパフォーマンス・アプローチ心理学に関する学習会に定期的に参加したり、ロイス・ホルツマンとの直接的な対話の機会に恵まれたりしたことは、本研究を推進していく上で有用な学びを得ることができた。引き続き、関連テキストの読解に取り組み、実践に接続する視点を探りたい。本研究の実践の中核としてきたパフォーマンス学習の機会として、アルテナラ前橋2023の実現を図ることができた。受講生を募集し、発表当日に向けて数回にわたるワークショップを通じ、市民が表現者になる過程において、招聘した講師のワークショップ内容等に学ことも多く、「アート的身体」(=状況に入り込む、想像/創造的な身体)について考えを深める契機を得ることができた。
・レッジョ・エミリア・アプローチに関する学びにおいて、アトリエリスタのヴェア・ベッキ氏の著作から、環境が子どもに与える影響の大きさや多感覚性が行き交う学びの重要性について検討する機会を得て、美術教育における「アート的身体」の理論及び実践につながる視点を得た。
・美術教育に関するシンポジウムや幼児教育における表現の重要性を伝える講演の機会を得るなかで、あらためて、世界と交わる接面となる身体性の価値について、わかりやすく共有していく必要性を感じている。理論と実践から適したエピソードを導き出したい。

今後の研究の推進方策

1.美術科教育学会投稿:「美術教育におけるアート的身体の一考察」と題して論文を執筆する。(投稿締切8月末)a.美術教育における身体性に関する文献調査により最新の研究動向を把握する。(5月中)b.美術(史)の文脈にてパフォーマンスに関する文献調査により研究内容を把握する。(5月中)c.パフォーマンス・アプローチ(パフォーマンス心理学)を軸に、その基礎となるヴィゴツキーとヴィトゲンシュタインの文献にあたり、理論の解釈を深める。(6月まで)d.ドナルド・A・ショーン『省察的実践とは何か』に基づき、美術教育における「アート的身体」の定義を考察・更新する。(7月まで)
2.パフォーマンス・アプローチの考え方に基づく実践(大学教員養成学部における授業)をもとに、実践記録及びインタビュー調査、分析を行う。(9月中)
3.小学校における身体表現と造形表現が融合する図工の授業観察を行い、実践記録及び指導者へのインタビュー調査、分析を行う。(12月まで)

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍により、予定していた計画が変更を余儀なくされ、海外研修及び(国内)旅費として見込んでいた額が次年度使用額となっている。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件、 招待講演 7件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 視覚障害のためのインクルーシブアート教材開発:アルチンボルドの絵画を「みたて」る鑑賞/表現題材2023

    • 著者名/発表者名
      茂木一司・竹丸草子・梶原千恵・大内進・高橋杏
    • 雑誌名

      日本美術教育研究論集

      巻: 56 ページ: 117-126

    • 査読あり
  • [雑誌論文] インクルーシブ色彩学習試論-色彩配色から学ぶ自己と世界の調和と対話2023

    • 著者名/発表者名
      茂木一司
    • 雑誌名

      跡見学園女子大学人文学フォーラム

      巻: 21 ページ: 49-60

    • 査読あり
  • [雑誌論文] アクティブ・ラーニングとしてのオンラインワークショップのつくりかた-『教育の方法及び技術』の授業研究-2023

    • 著者名/発表者名
      茂木一司
    • 雑誌名

      令和4年度跡見学園女子大学教職課程年報

      巻: 4 ページ: 150-156

  • [雑誌論文] 幼児の表現過程を捉える保育学生の学びに関する一考察 ―造形遊びの模擬保育実践を通して―2023

    • 著者名/発表者名
      井上昌樹
    • 雑誌名

      育英短期大学研究紀要

      巻: 40 ページ: 19-28

  • [雑誌論文] コロナ禍の色彩ー食事の色から生活をみるー2022

    • 著者名/発表者名
      郡司明子
    • 雑誌名

      色彩教育

      巻: Vol.40 ページ: 18-19

  • [学会発表] 図画工作「造形遊び」ワークショップ2023

    • 著者名/発表者名
      郡司明子
    • 学会等名
      令和4年度高崎市幼保小連絡協議会第4ブロック研修会
    • 招待講演
  • [学会発表] アルテナラ前橋2023ーつむぐー2023

    • 著者名/発表者名
      郡司明子・他
    • 学会等名
      アルテナラ前橋
  • [学会発表] 見えない/見えにくい/見える人がつくるインクルーシブアート教育が現代美術教育を改革する―メディアアアート教材開発を通して考えたこと―2023

    • 著者名/発表者名
      茂木一司・大内進・布山タルト(毅)
    • 学会等名
      アートミーツケア学会2022年度大会・総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 視覚障害のためのインクルーシブアート教材の開発:タクトロープとKoma Otoの開発過程2023

    • 著者名/発表者名
      茂木一司・布山タルト(毅)・大内進・竹丸草子
    • 学会等名
      第45回美術科教育学会兵庫大会
  • [学会発表] 子どものアート的思考から子ども観・保育観を問い直すーレッジョ・エミリアの乳幼児から保育の地平線の彼方へー2022

    • 著者名/発表者名
      植村朋弘、森眞理、徳田憲生、郡司明子、津田純佳
    • 学会等名
      日本保育学会第75回大会(自主シンポジウム)オンライン開催
  • [学会発表] Transcending the border of fantasy and reality in play as the key for children as agency for living through uncertainty.2022

    • 著者名/発表者名
      Mori, M. , Uemura, T., Gunji, A., Tokuda, N.
    • 学会等名
      EECERA 30th Conference (Glasgow, Scotland), ポスターセッション
    • 国際学会
  • [学会発表] 市民が文化芸術に関わる意味と可能性についてーartenarraを事例としてー2022

    • 著者名/発表者名
      郡司明子
    • 学会等名
      アルテナラ世田谷シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 幼時期における表現活動の可能性について2022

    • 著者名/発表者名
      郡司明子
    • 学会等名
      令和4年度第1回北区幼稚園教諭研修会
    • 招待講演
  • [学会発表] 子どもの育ちにおける造形活動の可能性2022

    • 著者名/発表者名
      郡司明子
    • 学会等名
      東京家政大学 第3回育ちのための表現シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Life記録ー2014ー2015ー2022

    • 著者名/発表者名
      郡司明子
    • 学会等名
      第7回お茶の水女子大学ライフ×アート展:記録展ー子どもにふれるー
  • [学会発表] メディアアートで人は幸せになる…?パンデミック以降のインクルーシブ社会におけるアート/教育の役割2022

    • 著者名/発表者名
      茂木一司
    • 学会等名
      令和4年度文化庁メディア芸術祭名古屋展「あそびのダイナミクス~こころのインタラクション」
    • 招待講演
  • [学会発表] 図工美術教科書は本当に必要か?(共生)社会構築の中の美術/(科)教育の意味・教科書づくりを通して自分たちにできることを考えよう2022

    • 著者名/発表者名
      茂木一司
    • 学会等名
      日本文教出版社美術教科書ワークショップ
    • 招待講演
  • [学会発表] 視覚障害のためのインクルーシブアート教材開発:アルチンボルドの絵画を「みたて」る鑑賞/表現題材2022

    • 著者名/発表者名
      茂木一司・梶原千恵・大内進・竹丸草子・高橋杏
    • 学会等名
      第56回日本美術教育研究発表会2022
  • [図書] 『美術教育の理論と実践 第2巻』 執筆担当「中之条ビエンナーレにおける群大美術の取り組み」2022

    • 著者名/発表者名
      編集委員会(代表:栗田真司) 共著者:市川寛也、内田裕子、小池研二、梶原良成、栗田真司、郡司明子、喜多村徹雄、林 耕史、齋江貴志、小口あや、片口直樹、高須賀昌志、武末裕子、博多哲也、平野千枝子、本 田悟郎、吉田奈穂子
    • 総ページ数
      238
    • 出版者
      学術研究出版

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公開日: 2023-12-25  

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