研究課題/領域番号 |
20K02817
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
川崎 誠司 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10282782)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 多文化教育 / 公正 / 正義 / 衡平 / エクイティ / ハワイ / equity / social justice |
研究実績の概要 |
本研究は、社会の多文化化が急速に進展している日本の教育課題、とくに社会科教育における「多文化共存のための教育」のあり方を考える基礎的かつ実践的な研究である。多文化社会では異質な価値観の衝突が生じる。文化の異なる者同士の相互理解を進めるには、社会科で育成すべき資質としての「公正な社会的判断力」を身につけることが有効である、という観点に立って社会科における学習指導のあり方について考究する。「公正」は「平等」と異なり定義や説明に馴染まない概念である。説明できない概念をどう教えるか、という課題に本研究は取り組む。そこで、アメリカの多文化教育における「公正教育学 (Equity Pedagogy)」を思考モデルとして理論研究を行うとともに、日米の具体的な社会科実践の観察・分析(授業の質的研究)と学校観察(職員会議や校内研修の観察)を通じてそれを明らかにすることが本研究の中心課題である。 本年は昨年から継続してアメリカの多文化教育の動向を注視しながら、多文化教育の理論研究を進めてきた。当初はアメリカに赴いて、小学校における授業観察を中心とした学校観察を行い、可能な限り職員会議や校内研修に参加するなど、フィールドワークを行って「内側から」公正な社会的判断力の育成の実際を描き出すことを目的としていた。 コロナ禍においては所属機関の渡航許可が得られなかったため、授業研究や校内研修の依頼を受けている都県・市町の小中高等学校に積極的に赴いて、日本国内における「公正な社会的判断力の育成」の実際を解明することに努め、それを国内外の学会において発表し、参加者からの示唆を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 本研究の方法は、 ・理論的研究 ・日米での授業観察を通じた実践的国際比較研究 ・日本におけるWebアプリケーションを活用した授業づくりにおける、授業者の「公正解釈」と学習者の「学びのプロセス」に関する実践的研究 から構成される。アメリカにおける授業観察は実施できなかったものの、理論的研究をいっそう深めることができたことと、授業の実践的研究を20以上の小中高等学校において実施することができたことが理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も昨年と同様に、研究計画書に示した以下3つの方法により研究を推進する。・多文化教育の理論的研究、 ・日米での授業観察を通じた実践的国際比較研究、 ・ 日本におけるWebアプリケーションを活用した授業づくりにおける、授業者の「公正解釈」と学習者の「学びのプロセス」に関する実践的研究。 アメリカにおけるフィールドワークを本格的に再開できない場合でも、国内における実践的研究を充実させるとともに、過去のアメリカにおけるフィールド ワークの記録を再構成して次年度のフィールドワークに備えるつもりである。本研究の期間を5年間としたことにより、こうした事態に柔軟に対応することができる。また、研究の視点を変えて過去の記録を分析・検討できることは、フィールドワークを通じた質的な授業研究の利点である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は海外旅費の計上額が大きいが、今年度も昨年度同様コロナ禍のため使用機会を失ったことと、研究計画の組み替えをし、国内における授業研究を前倒しして実施したことが大きな理由である。次年度は渡航が可能になれば速やかに実施し、支出したい。
|