最終年度には,「開脚跳び」の単元前後に,同じ動画教材の観察から読み取られた運動情報が,授業で指導された内容とどのような関係があるのかを明らかにし,その指導の成果を検討することを目的とした。そのため,実施された単元において,指導者がクラス全体へ指導した技術ポイントを抽出するとともに,単元前後に実施した動画観察による記述を分析した結果,以下のことが明らかとなった。
(1)動画教材の演技の評価について,単元前後で正答誤答の人数の割合が異なるかどうか分析した結果,本単元では指導者が意図した指導内容は,ほとんどの児童が理解しながら学習することのできる内容であったと推察された。 (2)15のカテゴリーにおいて,記述人数の割合が単元前後に異なるかどうか分析した結果,単元前から着目しているカテゴリーであっても,間違った知識が含まれてることもあり,授業で正しい知識を教える必要性があった。
これまでの一連の研究において,跳び箱運動の「台上前転」(2016),マット運動の「後転」(2019),「開脚跳び」(2023)を取り上げ,モデル映像と学習者自身の映像とを並べて比較できる2画面同時に提示する映像を開発して検討してきた。この2画面比較映像からは,教師が指導した技術ポイント以外の新たな観点を,児童自らが見い出しながら運動を観察していたことが明らかとなった。これは,見せ方によって読み取られる運動情報が異なるという事実を示していた。 さらに、開発した動画教材を用いた授業実践を、台上前転(2020)と開脚跳び(2024)に実施した結果,重点的に指導した技術ポイントについて、単元後には児童らが着目できるようになっていた。しかし,単元後の記述人数が少ない点もあり,これらは授業づくりの際に知識として教えるだけでなく,それらを見えるようにするための教師の手だてが不可欠であると推察された。
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