研究課題/領域番号 |
20K02838
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
川口 厚 桃山学院大学, 経済学部, 准教授 (10780851)
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研究分担者 |
中村 豊 東京理科大学, 教育支援機構, 教授 (10509938)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中学校部活動改革 / 地域移行 / 教育委員会との連携 |
研究実績の概要 |
2022年度は、前年度に引き続きT市部活動のあり方検討委員会の構成員として、教育委員会、学校と連携を図り、中学校部活動の状況把握と地域移行のあり方、学校による部活動運営の適正化等に関する研究を進めてきた。T市の部活動改革を推進するための基礎資料を得るために、2020年度と2021年度に実施した生徒・保護者・教員対象の質問紙調査は、本事業が研究協力を行った取組である。本事業は、これらの調査結果を踏まえ、部活動のあり方検討委員会設置の必要性を提言するなど、T市部活動改革を推進するための組織体制構築に貢献している。 そして、これまでの研究成果を整理検討し、研究者代表・研究分担者・研究協力者による研究発表を行った。日本生涯教育学会において2022年11月に日本語による口頭発表2件、43th Keimyung University-Momoyama Gakuin University International Academic Seminarにおいて英語による口頭発表1件である。 また、2023年3月にメルボルンにおいて地域スポーツクラブ経営を支援するNPO団体Sports Community代表者へのインタビュー調査及びテニスクラブの活動視察と代表者へのインタビュー調査、研究者との研究交流を行った。これらの取組の成果として、オーストラリアの地域スポーツクラブにおける現状と課題が把握され、我が国の部活動のあり方を検討する上で貴重な基礎資料を収集することができた。 次年度の取組は、引き続きT市部活動検討委員会に参画し、中学校部活動のあり方についての調査研究を継続することである。また、T市との連携による研究成果をもとに、持続可能な部活動のあり方を提言する研究論文にまとめる。そして、これまでの日豪比較研究の成果をオーストラリア日本研究学会研究大会(2023年9月)で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、3回の研究打ち合わせ(6月、8月、11月)を実施し、研究活動の進捗と今後の研究計画を確認しながら取組を進めてきた。また、2021年度に引き続き、T市教育委員会と連携し中学校部活動改革に取り組み、部活動の地域移行のあり方について検討してきた。検討会での議論や教育委員会担当者との情報交換等から得られた知見、行政文書、マスコミの情報等をもとに調査分析した結果、文部科学省の提言に沿って市内一律に部活動改革を進めることが困難な状況にあることが分かってきた。その背景として、部活動の受け皿となる地域クラブや外部指導者の数的な問題、教育委員会予算の不足等がある。 そのため、本事業期間を1年間延長し、地域や各学校の実態を踏まえた部活動運営の適正化や地域移行に固執しない持続可能な部活動のあり方について研究を継続し、その成果を提言していくこととした。また、海外研究においては、これまで蓄積してきた研究成果を整理検討し、2023年9月の国際学会発表に向けた準備を進めることとした。
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今後の研究の推進方策 |
スポーツ庁と文化庁は、2022年12月に部活動の地域移行のあり方に関する提言を公表し、令和3年から3年間を改革推進期間と位置付けて、部活動の地域クラブへの移行の必要性を示している。一方で、自治体では、部活動の地域移行が頓挫した事例や、部活動指導にかかる人材確保が難航している事例等が見られる。本事業が研究協力を得ているT市においても、部活動指導に係る外部人材の確保と育成、これに必要となる教育委員会の予算確保等が課題となっている。本研究を開始した2020年度とは、部活動に係る地域の現状は大きく異なってきており、これに対応するための研究が求められている。 上述したように、本事業は、学校における部活動改革の過渡期に対応していくことが求められている。具体的には、部活動改革を進めてきたことにより見えてきた地域や学校の実態を踏まえ、政府が提言するような部活動の地域クラブへの移行に関する方策に加えて、これに固執しない新たな方策を提言することが必要と考えている。 ところで、本事業は、研究代表者が博士課程において進めてきた、中学校運動部活動における生徒指導の機能に関する研究に端を発する。この研究において今後の課題として示した、部活動の持続可能なあり方を具体的に提言し、教育委員会や学校の部活動改革に貢献していくことが本事業最終年度の到達目標である。以下に本年度の主な取組を示す。 本事業の研究分担者は、関東地区の自治体において、部活動の地域コーディネーターとして中学校部活動改革に実際に取り組んでいる。ここで得られた知見とT市部活動改革への参画を通して得られた知見を基に、行政と地域と学校が連携して部活動改革を推進するための方策を検討する。次に、オーストラリアの地域スポーツクラブ研究を通して得られた知見をもとに、地域の実態を踏まえた持続可能な部活動と地域スポーツクラブのあり方を提言する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会で発表を予定していたが、この学会の発表が2023年9月に行われることとなった。未使用額は、2023年9月にこの学会に参加するために必要となる旅費や宿泊費、学会参加費等に充当する予定である。
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