本年度は,3年間の研究の最終年度ということで,研究計画として遅れていた教員養成大学への聞き取り調査を実施するとともに,算数・数学教育における非認知的能力の特性の把握に関する調査結果を分析し,これまでの研究のまとめを行った。 まず,教員養成大学・学部への聞き取り調査に関しては,新型コロナウィルス感染症の影響も収束の兆しが見えてきたため,福岡教育大学,鹿児島大学,大分大学へ出向き,聞き取りを行った。主に教科の専門的事項に関する科目と教科の指導法に関する科目の関連性について聞き取りを行ったが,小学校の教員養成においては,算数科の内容と指導法を切り分けて講義を構成することは難しく,内容領域とリンクさせて指導法に関する講義を行っている傾向が見られた。また,非認知的能力の育成については,現段階では具体的な講義内容として編成できていないことも明らかとなった。 一方で,非認知能力の評価に関する小学校教師を対象とした調査の分析においては,昨年度実施したアンケート調査の結果を因子分析によって分析した。その結果,教師による児童の非認知能力の評価傾向は,「思慮深さ」「協調性」「共感性」「落着き」という4つの因子で捉えられることが明らかになった。これらの分析結果は,論文化し日本数学教育学会の第10回春期研究大会において発表した。また,これらの因子分析の結果を算数科の4つの内容領域別に再分析し,認知的能力の評価との関連性を考察した。この結果についてはすでに論文化しており,日本数学教育学会の第11回春期研究大会において発表予定である。 教員養成大学,学部への聞き取り調査の遅れなどがあり,算数・数学科の教科特性を踏まえた教職課程コアカリキュラムの完成には至らなかったが,教師による非認知能力の評価に関する知見が得られたことにより,教職課程コアカリキュラムに対して一定程度の見通しを持つことができた。
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