本研究は、理科教育において重要な課題である使徒のデータ解釈能力の育成に関するものである。令和4年度の研究では、データ解釈におけるメタ認知的知識である「方略としての知識」を獲得・理解させ、この「方略としての知識」を適用する授業実践を通してデータ解釈能力を育成することができた。しかしながら、「方略としての知識」である「手続的知識」の認識まで詳細に検討することができなかった。そこで、令和5年度は、「方略としての知識」である「手続的知識」の認識に関して、調査を進めた。具体的には、手続的知識の認識の実態を明らかにするために,中学校第3 学年の生徒を対象に、手続的知識に関する調査問題を開発・実施した。その結果、グラフの傾きや線形、非線形、3 次元の座標やグラフ、そして数式の導出に関してデータ解釈の手続きと捉える認識が低かった。したがって、これらは数式化と関連することが多いため、数式の導出をデータ解釈と捉える指導が必要となると言える。また、数式の導出に関しては、予測、推論、仮説において文章表現のみならず数式表現も存在すること、また、結論の正しさ及びデータ分析や結論の言える限界を示す際には数式が効力を発揮すること、データ間の定性的な類似点と相違点を説明する際にも、数式を利用して説明できることを指導していく必要があることも示唆できた。 最後に、研究期間全体を通じて実施した研究の成果については、前述したように、「方略としての知識」である「手続的知識」の認識の実態の解明、及び「手続的知識」の獲得、そして、この適用を通したデータ解釈能力の育成が検討できた。
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