研究課題/領域番号 |
20K02853
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
高橋 智子 静岡大学, 教育学部, 准教授 (20436900)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 知的障害 / 鑑賞学習 / 鑑賞の視点 / 認知 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、知的障害のある児童生徒を対象として、図画工作科及び美術科の鑑賞活動における美術作品の認知に関する特徴を明らかにすると共に、鑑賞活動の指導支援システムの開発を行うことである。 2020年度は、①児童生徒及び教員を対象とした鑑賞活動や鑑賞学習に対する実態把握と②鑑賞活動における児童生徒の美術作品に対する認知の特徴分析に取り組んだ。 ②については、前年度(2019年度)に実施した特別支援学校(知的)の高等部を対象とした鑑賞活動を手掛かりに、知的障害のある生徒の作品鑑賞の視点について分析を行った。鑑賞対象は、「屏風」とした。「テーマ」「モチーフ」「色や形」「技法」「使用方法・機能性」「形態」等の様々な特徴を持つ屏風の鑑賞を通して、生徒の作品鑑賞における着目点を探った。実践では、紙媒体による事前学習及びレプリカを用いた対話型鑑賞に取り組み、各活動での鑑賞の視点に関する分析を行った。 この分析の結果、事前学習では視覚的に特徴のある色や形(形態)に注目しており、機能性や描かれている内容(テーマ等)について、特に興味を示さない傾向であることが確認できた。ほぼ同サイズの屏風レプリカを用いた鑑賞では機能性に着目する傾向が強くなり、事前学習でみられた視覚優位の見方だけでなく、鑑賞の視点に広がりが見られた。この視点の広がりには、体験を伴う鑑賞活動であること、学びを反復し段階的に指導を行うこと、教科横断的な学びの連続性を意識することが重要であることが確認できた。 ①については、上記の実践校の教員を対象として授業づくりに関するアンケートを実施した。そのアンケートをもとに、伝統的な美術作品を用いた授業の実態や鑑賞の授業に関する実態を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、前年度までの実践や実態調査の分析に加えて、学校現場でのアンケート調査やインタビュー調査、授業観察等をもとに、①児童生徒及び教員を対象とした鑑賞活動や鑑賞学習に対する実態把握を行う予定であった。前年度までの実践や実態調査に関しては分析を終えたが、新型コロナウィルス感染症の影響を受け、学校現場でのアンケート調査やインタビュー調査、授業観察等が思うように進めることができなかったため、上記の達成度とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、まず、遅れている学校現場でのアンケート調査やインタビュー調査、授業観察等に取り組み、既に得られた成果と合わせて、①児童生徒及び教員を対象とした鑑賞活動や鑑賞学習に対する実態把握に取り組む。その際、当初予定していた対面による調査のみならず、オンラインによる調査を取り入れる等、調査方法に工夫を行い現場の実態を探っていく。次に、小学部における美術作品の鑑賞題材の検討を行い、その題材をもとに、事例研究に取り組み、児童の美術作品に対する認知の特徴等の分析をさらに進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までに実施する予定であった現場での児童生徒及び教員を対象とした鑑賞活動や鑑賞学習に対する実態調査が、新型コロナウィルス感染症の影響で延期したことにより、この調査に要する人件費及び旅費やICT関連機器、消耗品等を次年度以降使用することになった。
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