研究課題/領域番号 |
20K02855
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
渡邊 慶子 (向井慶子) 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (00572059)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 証明 / 中高接続 |
研究実績の概要 |
2021年度は,「『証明すること』を核とした実験授業の実施と分析」を主要な課題として,附属中学校の協力を得て,授業実践をし,データを収集して考察した。その際,授業で取り扱う教材には「中学3年生から高校数学への接続」が可能な内容を採用し,中高一貫する数学科授業の特徴を明らかにする。 中高接続を意識した証明教材として「場合分けのある証明(中3:円周角の定理)」を設定した。この教材を用いた授業を事例として,2021年度は証明をすることが数学的理解を促すという視点から証明概念を捉える理論研究を整理し,授業分析の枠組みを構築して実証授業をし、データを考察した。この研究成果として、国内学会の学会誌に論文1編が掲載された。さらに関連する共同研究において、共著で国際学会に1編の論文が採択され,プロシーディングへ掲載されるとともにオンラインで開催された学会で発表された。加えて,証明の多様性を生かした中高接続教材の開発とその授業原理に関する新たな研究課題を設定した。このテーマに関しては研究成果の一部を国内学会で口頭発表要旨として公表し,国内学会で発表をした。このテーマは,単に証明を作ることができることを越えて,証明を用いて数学的なコミュニケーションを図るという中高を接続する証明の役割の変容に焦点を当てたものである。 さらに,空間図形における証明の学習指導についても研究を進めた。日本の数学教育における空間図形の証明指導の現状と課題を明らかにするために,中学2年生に対して実験授業を実施した。この成果の一部は2022年度に開催される国内学会の発表集に単著論文1編として掲載される。2021年度は,三垂線の定理の証明の過程を考察して,空間図形における証明の学習指導において留意すべき事項を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実践協力校を、Covid19感染状況によって変更する必要が生じた。しかし,研究課題と教材を検討し直すことによって,授業実践が可能な状況に対応させることができた(公立中高等学校での実施を附属中学校での実施に変更)。
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今後の研究の推進方策 |
〔 第3期(2022年度)課題3:「証明すること」を核とした授業の「物語一貫性」を視座とした分析と構成原理の導出,研究の総括〕を予定している。 2021年度の研究で得た授業記録の音声起稿とフィールドノートやワークシートのコピーを資料とし,授業の物語的一貫性という視点(岡崎・木村・渡邊,2016など)を援用して,「証明すること」を核とした授業の特徴を捉える。この際,分析対象となる授業は高校数学への架け橋となるような中学校数学科の授業実践で得たデータとなる。 また,2022年度は本事業の最終年度であるため,関係学会への参加のための移動費に加えて,研究報告書を製作するための費用としても助成金を使用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の感染状況が改善しないため,国内並びに国外で開催された学会は,全てオンラインで開催された。したがって,そのために計上していた移動費・滞在費等に違いが生じた。 加えて、国内の協力校でのデータ収集に学生・院生の謝金を計上していたが,Covid-19の感染対策の一環として,データ収集のための要員を派遣できなくなった。そのために,計上していた人件費等に違いが生じた。 さらに、データの音声寄稿を業者に発注する予定であったが、マスク着用環境下でのデータ解析が不可能な業者の事情から,発注することを断念したため、計上していた費用と違いが生じた。
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