研究課題/領域番号 |
20K02857
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
原 祐一 岡山大学, 教育学域, 講師 (80550269)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 体育授業 / コンピテンシー / エビデンス / スポーツ共創 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、豊かなスポーツライフを実現するために必要なコンピテンシーを明らかにし、そのコンピテンシーを体育授業で高める際に活用可能なエビデンスを集約することと、エビデンス活用の方法ならびに課題を提示することであった。本年度は新型コロナウィルスの影響も強く残っていることから、海外調査も含めて現地調査が難しいという判断を早期に行い、文部科学省が提示しているキー概念としての豊かなスポーツライフについて理論的な検討を深めることとエビデンスの活用方法についての知見を集約することとした。 その結果、エビデンスについては本学が設置したEIPPEセンターの教員として岡山県の受託事業を実施し、県が提示する課題とデータの整合性を検討する際に表出する課題を明確にすることから、本研究対象である体育授業への転用可能性について検討した。また、岡崎氏(岡山大学)が中心となって翻訳する海外文献を共同的に検討することから、エビデンスをいかに蓄積しながら授業改善を可能にするのかについて検討を行っている。豊かなスポーツライフ概念を精緻化するために、ウェルビーイング・QOLに関する文献を整理し、「豊かさ」の概念定義をおこなった。 また、実践研究として体育授業において多元的な価値を内包する授業モデルについて検討を行い、岡山県の小学校において実際に授業実践を行いデータを集積した。その結果、スポーツ共創概念を取り入れた授業モデルの構築の必要性が導かれている。単に技能を習得することから脱し、子どもたちが自らスポーツを他者とと共に創造していくことによってコンピテンシーが育成可能となる可能性が示されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの影響を受け、海外調査が実施できていない。しかし、海外のサイトを中心に公表されているエビデンスを整理し、翻訳作業を通してエビデンスを学校現場でいかに活用可能なのかについてのエビデンスが蓄積されつつある。また、豊かなスポーツライフに関わる概念についても授業実践を通して具体的に検討を始めることができている。さらにスポーツの捉え方についての研究も進めることができた。研究会を中心に議論を重ねることによって、これまでの特性の捉え方をより精緻化することが必要であることと、そのための資料を整えることができた。よってこれらをまとめ、次年度論文という形で公表する予定である。 実証研究については、実際にRCTを組んで授業実践するためのシミュレーションもある程度できてきたため、次年度の計画に反映させパイロット的に実施することが可能になった。 ただ、海外の研究者へ現地に赴いてディスカッションをすることをしなければ、海外でのグッドプラクティスしか手に入らない。海外の研究での困難さや失敗事例を収集することを通して、日本における可能性を検討する必要があるため、新型コロナウィルスが落ち着き次第、調査に行く必要がある。この点については、社会情勢を見ながら早期に実施できるようコンタクトをとっていくこととする。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染状況にもよるが、次年度は実際に海外調査を行いたい。そのために、海外とのネットワークを構築するとともに、エビデンスを用いた教育の困難さに関わるデータを収集する予定である。 豊かなスポーツライフに関わって、スポーツの捉え方を進化させる必要があるが、特性の捉え方という視点から論文にすることを計画している。また、パイロット的にいくつかの学校で比較検討を行うことで、どのような授業方略によってコンピテンシーを高めうるのかについて検討を具体的にすることとしたい。 エビデンスに関わって、さまざまな研究が進められつつあるため、領域横断的に検討をすることを通して、体育授業に活用可能なプラットフォームの検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で、国内学会等の旅費が発生しなかったため。また、当初予定していた海外調査ができなかったことから次年度使用額が発生した。
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