本研究の目的は、豊かなスポーツライフを実現するために必要なコンピテンシーを明らかにし、そのコンピテンシーを体育授業で高める際に活用可能なエビデンスを集約することと、エビデンス活用の方法ならびに課題を提示することであった。 本年度は、そもそも学習指導要領作成過程において議論される中央教育審議会において、エビデンスがどのように取り入れられ、政策立案に生かされているのかについて明らかにすると同時に、具体レベルにおいてコンピテンシーを高める授業論を確立することが課題となっており、この2点について研究を進めた。 まず、中央教育審議会においてエビデンス・ベースド・ポリシーメイキングがなされているのかについて、議事録から明らかにした。その結果、エビデンスという用語は会議ごとに出現するものの、エビデンスが重要であるという指摘にとどまっており、具体的なエビデンスが示されることは少なかった。委員会内でエビデンスが重要であるという認識は共有されつつも、政策立案に影響するような具体的エビデンスは示されていないことから、学習指導要領実施度調査などを踏まえた議論の重要性が指摘された。また、政策立案をする際に活用しうるエビデンスの収集と整理が必要であることが指摘された。 次に、具体的な授業実践については、小学校と中学校において授業実践をすることができた。コンピテンシーを高める授業を実施するためには、そもそもの授業論が重要な意味を持つことから、あらためて従来の授業論を捉え直し、プレイ論からゲーム論への理論的整理を行った。このことにより、多様な価値観や身体を持った児童生徒がインクルーシブされる授業が展開された。よって、児童生徒が自らゲームを構成し続けながらプレイをする必要性が示された。
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