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2023 年度 実施状況報告書

五線譜に代わる選択肢「フィギャーノート」の音楽科への導入可能性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K02865
研究機関明星大学

研究代表者

阪井 恵  明星大学, 教育学部, 教授 (00308082)

研究分担者 酒井 美恵子  国立音楽大学, 音楽学部, 教授 (10407075)
布施 光代  明星大学, 教育学部, 教授 (10454331)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワードフィギャーノート / 読譜 / 音楽科 / 教員養成課程
研究実績の概要

共同研究者の布施光代(明星大学)を中心に,これまでに,教員養成課程の学生(音楽大学生221名,音楽大学以外の学生619名)の回答を得た質問紙調査の分析を行った。
フィギャーノート普及のために制作したビデオの視聴は,ユニバーサルデザインとフィギャーノート,ディスレクシアに対する理解度や関心を深めたか。またフィギャーノートを知ることで,音楽の授業や器楽指導における楽譜の扱いについての考えが変化したか,フィギャーノートを導入するために課題となることは何か。前半は以上について分析をした結果,動画視聴の効果は示された一方,学生全体としては,音楽指導において五線譜が重要であるという指導観も明らかになった。また,フィギャーノートの採用に当たっては,個々の音楽授業担当者だけではなく,管理職や保護者を含む環境全体での理解が必要である,無料あるいは安価である,入手しやすい仕組みが必要である,などが明らかになった。
さらに,音楽大学生とそれ以外の学生では,音楽や音楽指導に対する考え方が異なるこ
とが予測されたので,比較をとおして,音楽大学の学生の特徴を検討した。その結果,音楽大学の学生は,学校教育における音楽科を重視している一方で,音楽を選択科目でもよいと考えていることも示唆された。また,音楽大学の学生は,五線譜を重視する考えが強く,音楽を専門としない学生に比べ,フィギャーノートを許容しない傾向も観られた。以上はフィギャーノートの普及戦略のために,大変有効な示唆であった。
また,フィギャーノートの使いやすい仕組みづくりのため,教科書著作権協会への働きかけを行い,障害者手帳のある人にはフィギャーノートの無料配布が可能になった。しかし通常学級における学習補助手段としてのフィギャーノート使用の条件は,まだ十分に整わない現状である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究計画では,最終的にはフィギャーノートを活用した授業の実際を提案することにしていた。しかし2020年度から3年にわたるコロナ禍のため,音楽授業全体が様々の変更を余儀なくされ,結果的に授業方法の変化の兆しも生まれた。タブレットの活用方法などと,どのように調和を図っていかれるかという問題,検定教科書の2024年度(小学校),2025年度(中学校)改訂を見ながら教材づくりをするという問題などが,新たに視野に入ってきた。また,フィギャーノートの自由使用のためにバリアとなっている,音楽著作権と教科書著作権の問題が解決できていない。
それらへの取り組みのため,計画よりもやや遅れている。

今後の研究の推進方策

当初予定していた,教員養成課程の学生だけでなく,現職の教員からも,フィギャーノート普及のために作成したビデオの視聴後の質問紙への回答が得られたので,2024年度は其れについて分析を進める。学生・教員を併せて900名強からの回答をもとに,フィギャーノートが選択的に採用されるための条件をまとめる。よりインクルーシブな音楽科の在り方に繋がることとして,教育哲学や現代社会の動向や他教科との連携など,視野を広げて考察していく。
また現場の教員がフィギャーノートを使いやすくするために必要な事項が,これまでの研究プロセスから見えてきた。学術的というより,物理的に技術的な問題であったり,行政的な問題であったりするが,本研究終了以後に継続して必要なことであるので,一応の方略を立て,まとめておく。

次年度使用額が生じた理由

2023年度で本研究を完了する予定であったが,フィギャーノートを実際に使用した現場への聞き取り調査を行うことや,タブレット使用との兼ね合いの図り方を考えることなど,新たに追加する課題が生じ,2024年度に持ち越すこととした。これらの課題は2024年度に遂行するとともに,学会発表(日本心理学会,日本音楽教育学会,日本発達心理学会)も行う予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 学びの多様性と「フィギャーノート」の可能性(3)―音楽大学の学生のフィギャーノートや音楽科に対する認識の検討―2024

    • 著者名/発表者名
      布施光代・阪井恵・酒井美恵子
    • 雑誌名

      日本発達心理学会第35回大会発表論文集

      巻: 35 ページ: 378-378

  • [雑誌論文] 学びの多様性と「フィギャーノート」の可能性(2)ー動画視聴による効果および指導の観点からの検討―2023

    • 著者名/発表者名
      布施光代・阪井恵・酒井美恵子
    • 雑誌名

      日本新理学会第87回大会発表論文集

      巻: 87 ページ: 3A-68-PP.

  • [学会発表] インクルーシブ教育の動向とインクルーシブな音楽科の可能性2024

    • 著者名/発表者名
      阪井恵
    • 学会等名
      日本音楽教育学会 関東支部例会
    • 招待講演
  • [学会発表] 認知発達研究のこれから-「わくわくする研究」を目指して-」2024

    • 著者名/発表者名
      木村美奈子・浅川淳司・高平小百合・布施光代 司会:木村美奈子
    • 学会等名
      日本発達心理学会第35回大会
  • [学会発表] 学びの多様性と「フィギャーノート」の可能性(2)―動画視聴による効果および指導の観点からの可能性―2023

    • 著者名/発表者名
      布施光代・阪井恵・酒井美恵子
    • 学会等名
      日本発達心理学会
  • [学会発表] 学びの多様性と「フィギャーノート」の可能性 (3)―音楽大学の学生のフィギャーノートや音楽科に対する認識の検討―2023

    • 著者名/発表者名
      布施光代・阪井恵・酒井美恵子
    • 学会等名
      日本心理学会
  • [学会発表] Japanese Music Classes from the UDL Perspective: Barriers in the Curriculum2023

    • 著者名/発表者名
      Megumi Sakai
    • 学会等名
      Asia-Pasific Symposium for Music Education Research
    • 国際学会
  • [学会発表] 『 小学生の生活とこころの 発達』 のこれまでとこれから2023

    • 著者名/発表者名
      伊田勝憲・大久保智生・田丸敏高・布施光代 司会者:滝口圭子
    • 学会等名
      心理科学研究会2023年秋の研究集会児童発達分科会 (話題提供)

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公開日: 2024-12-25  

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