研究課題/領域番号 |
20K02868
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研究機関 | 神戸親和女子大学 |
研究代表者 |
高橋 一夫 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (10584170)
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研究分担者 |
須増 啓之 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 講師 (10869712)
白波瀬 達也 常磐会短期大学, その他部局等, 教授 (90512385)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 幼児 / 発話 / 会話 / 造形表現活動 / 保育者 |
研究実績の概要 |
交付申請書の「研究実施計画」に示したように、2020(令和2)年度の計画としては、保育活動中の幼児同士の言葉による伝え合いの構造を解明するために、保育現場において幼児同士の会話の発展過程を動画によって記録し、分析することを主たるものとして設定していた。 しかし、新型コロナ感染症の罹患状況の悪化から、2020年度の前半は保育現場での実証実験が困難であった。そのため、過去に収集した保育活動中の幼児同士の会話について、幼児の位置関係に注目し、会話の発展過程について分析をおこなった。その結果、幼児の位置関係の違いによって幼児同士の会話の発展過程に違いが確認できた。具体的には、幼児同士が頭を突き合わせて活動できるような位置関係にある場合、幼児同士の会話が活動の内容に即した話題により発展した。この結果は、新型コロナ感染症の罹患を防ぐために実施している制限を加えた保育活動によって、幼児同士の会話がこれまでとは異なった形で進行する可能性を示唆しているといえる。この成果については、2020年9月の日本教師教育学会第30回研究大会、また、2020年11月の関西教育学会第72回大会にて成果発表をおこなった。 2020年度の後半は、新型コロナ感染症の罹患状況の推移を配慮しながら、データ収集が難しい時期を避け、現場との密な情報交換や共同研究者との連携によって、数種類の造形表現活動を設定し、その活動中の幼児同士の会話を動画によって記録する実証実験を実現することができた。満三歳児、三歳児、四歳児、五歳児の保育活動の記録をおこなったが、満三歳児の造形表現活動中の発話については、既に分析をおこない、2021年5月に開催される日本保育学会において分析結果について発表する予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でも述べたが、研究の初年度である2020年度の前半は、新型コロナ感染症の罹患状況が全国的に悪化し、関西圏でも緊急事態宣言が発出されたため、保育現場での実証実験を遂行することができなかった。そのため、共同研究者とも打ち合わせを重ね、新型コロナ感染症によって余儀なくされた新しい生活習慣の下での保育現場の活動における幼児同士の会話への影響を、これまでに収集していたデータを用いて、幼児同士の位置関係に注目し分析をおこなった。 幼児同士の位置関係については、グループ活動時によく見られる頭を付き合わせた隊形と、一方で、横一列に並んだ隊形での比較検討をおこなった。その結果、頭を突き合わせた隊形では、幼児同士の会話においても保育活動の内容に即した話題が多く出現したが、横一連に並んだ隊形では、保育活動の内容に即した話題の継続が少なく、関連しない話題が多くみられる結果となった。この状況は、新型コロナ感染症禍によって、保育現場においても幼児同士が十分にコミュニケーションが取れる位置関係での保育活動が制限されている状況に類似しているといえる。そのため、新しい生活習慣の下での保育現場の活動では、これまで以上に、幼児たちの発話を支援できるような保育者の関わりが必要となると指摘できる。 一方で、2020年度の後半は、新型コロナ感染症の罹患状況を勘案しながら、保育現場とも密に連絡を取り合い、実際に保育現場での幼児同士の会話の姿を動画によって撮影することができた。幼児同士の会話が発展する保育活動として、造形表現活動を数種類提案し、その活動中の幼児同士の会話を収集した。提案した造形表現活動としては、「スライム作り」「トイレットペーパー遊び」「積み木作り」「段ボール箱遊び」「段ボール迷路遊び」である。現在、それぞれのデータの分析をおこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、基本的には交付申請書の「研究実施計画」に示した計画に沿って実施する予定である。 ただし、2021年度も新型コロナ感染症の罹患状況に大きな変化が見られ、4月段階ですでに関西圏にも緊急事態宣言が発出されている。そのため、保育現場の状況を勘案しながら、共同研究者とも協議を重ね、保育現場の幼児たちの安全が十分に守られた形を模索しながら研究を推進したいと考えている。 具体的な対応策としては、実証実験の時期を2021年度の後半に設定することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の罹患状況の悪化により、成果発表を予定していた学会の開催が、オンライン化したために、交通費等の支出に変化が生じたため。
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