研究課題/領域番号 |
20K02868
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研究機関 | 神戸親和女子大学 |
研究代表者 |
高橋 一夫 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (10584170)
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研究分担者 |
須増 啓之 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 講師 (10869712)
白波瀬 達也 大阪成蹊大学, 教育学部, 准教授 (90512385)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 幼児の発話 / 保育者の支援 / 造形表現活動 |
研究実績の概要 |
2年目の研究では、幼児の会話の活性化する仕組みの検討に重点を置くこととしていた。具体的な研究の実績としては、2021年5月の日本保育学会第74回大会での発表と、2022年2月の神戸親和女子大学児童教育学研究第41号への原稿の投稿である。 まず、日本保育学会の発表では、満三歳児の造形表現活動に注目し、子どもたちの興味関心が高い造形表現活動が発話への刺激になることと、子どもたちの活動を支援するなかでの保育者の言葉掛けが子どもたちの活動への没入に影響することを示した。満三歳児という低い年齢の幼児の発話は短く、単語の表出に留まってしまいがちであるものの、自身の感情を他者に伝えたいという強い欲求の芽生えが根底にあり、成長過程において長い発話を生み出す端緒とも言えるため非常に重要であるといえる。つまり、幼児同士の会話の活性化を支えるための仕組みとしては、子どもたちの興味関心が高い活動を実践することと、適切な保育者からの言葉掛けが重要であることが明らかになった。 次に、児童教育学研究第41号の原稿では、造形表現活動時における幼児の自発的に考えることができる契機について注目した。具体的には年長児が協力して段ボール迷路を設置する活動を通し、幼児の会話の活性化について分析をおこなった。保育者などが主導する保育活動ではなく、幼児自らが考え行動する必要がある機会が内包されている保育活動では、幼児たちが生き生きと主体性を発揮する姿が窺えた。また、その際に、自身の思いを他児や保育者に伝えるために積極的な発話が確認できた。つまり、幼児同士の会話の活性化を支えるための仕組みについて、年長児では自ら考えて行動することが必要な場面を持つ保育活動を実践することが必要不可欠であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度も、2020年度と同様に、新型コロナ感染症の罹患状況を勘案しながらの研究活動となった。特に、本研究では保育現場との協力が必要であることから、慎重に実証実験などの是非について検討した。2021年度は4月上旬に緊急事態宣言に準じたまん延防止重点措置が関西地域でも適応され、4月下旬には緊急事態宣言が発出された。その後、7月に一旦緊急事態宣言が解除されたものの、8月下旬から9月末日まで再度宣言が発出された。また、秋から冬にかけても、各保育現場において新型コロナの感染者や濃厚接触者が発生したため、予定をしていた保育現場での実証実験を延期せざるを得ない状況となった。 しかし、一方で、共同研究者間や保育現場で活躍する保育者との打ち合わせや意見交換を密にすることができ、これまでに実施した実証実験のデータを精緻に分析することができた。そのため、研究の進捗状況としては、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、交付申請書の「研究実施計画」に示した内容に沿って実施する予定である。1年目および2年目の研究と同様に、実証実験に関しては保育現場の状況を勘案しながら、幼児及び保育者の安全を確保できるように臨機応変に対応したいと考えている。 また、最終的には本研究で得られた知見を、保育現場の保育者が利用可能な形で還元することを目指す。具体的には、パンフレットや小冊子という形式で、多忙な保育者でも活用可能なものを想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度と同様に、本年度も新型コロナ感染症の罹患状況の悪化により、保育現場での実証実験が延期になったことで直前に計画を変更したために支出に変化が生じたためである。
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