最終年度の研究では、これまで実証実験を重ねてきた幼児の会話が活性化する仕組みを実際に組み込んだ保育活動案の効果について、子ども達にとって効果のある保育活動案となっているかを検証し、活動案の精緻化を図ることを目指した。具体的な研究の実績としては、2022年5月の日本保育学会第75回大会での発表と、2023年2月の神戸親和女子大学児童教育学研究第42号への原稿の投稿である。 日本保育学会における発表では、満三歳児のグループでの協同による造形表現活動に注目した。すでに子どもたちが経験している個別の活動から、同じテーマを持った協同の活動が積み重なることにより、活動における子どもたちの行動が発展し、子ども達同士での気持ちの共有され、発話が活性化することが明らかとなった。 児童教育学研究第42号への原稿では、大量の積み木(木切れ)を使用した造形表現活動について、満三歳児、4歳児、5歳児のそれぞれの言動の特徴に注目した。満三歳児では、木切れに触れた時の喜びや嬉しさを保育者に伝えようとする行動が特徴的であった。一方、4歳児や5歳児では、保育者との関りもあったが、幼児同士で会話をしながら木切れを集める・並べる・積み上げる・見立てる・組み立てるといった活動に集中していく姿が確認できた。また、造形表現活動で用いる素材(木切れ)自体の魅力が高いことが、子ども達を活動に誘い、集中させることができる要因となっていることも改めて確認することができた。 研究期間全体を通じて、検討した造形表現活動はスライム遊び、粘土遊び、トイレットペーパー遊び、段ボール遊び、積み木(木切れ)遊びであり、それぞれの活動について検証をおこなってきたが、いずれも使用する素材の魅力が高く、子ども達は活動に没頭し、発話・会話が発展した。それらの保育活動をとりまとめたパンフレット(A3両面カラー)を作成し、保育現場との共有を図った。
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