研究課題/領域番号 |
20K02881
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
磯山 恭子 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター研究開発部, 教育課程調査官 (90377705)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 社会科 / 市民的資質 / 法遵守社会 / 法教育 / アメリカ / スウェーデン / 法的価値判断 / カリキュラム |
研究実績の概要 |
本研究は,日本の法遵守社会(lawful society)の進展を受けて,市民のための法教育のあり方を考える基礎的研究である。本研究の目的は,市民に必要な法的価値判断の意識・能力の育成を目指す法教育の理論と実践を多面的に分析し,日本の小・中学校の法教育のカリキュラムを構想するために必要な視点を提出することである。その際,アメリカの「法教育」(Law-Related Education)およびスウェーデンの社会科科目「公民」(Civics)の「権利・公正学習」(以下,権利・公正学習とする)を先行モデルとする。令和4年度には,次の四つの研究方法のもとで,本研究に取り組んだ。 1.アメリカおよびスウェーデンの法教育,権利・公正学習に関する州社会科フレームワーク,関連団体のカリキュラムを分析した。 2.アメリカの法教育,スウェーデン,フィンランドの権利・公正学習に関する教科書を分析した。さらに,アメリカとスウェーデンの法教育を比較しようと試みた。 3.現地の追跡調査を変更して,オンラインで,法教育研究の専門家から意見聴取を行う等,情報収集を行った。 4.小・中学校における法教育の授業モデルの開発を行った。小・中学校における法教育の授業の実践を変更して,法教育のあり方の情報交換を行い,法教育に関する授業を参観した。 令和4年度には,令和3年度に得られた知見に基づき,日本の小・中学校における法的価値判断の意識・能力の育成を目指す法教育の授業モデルの精緻化を試みた。さらに,日本の小・中学校における市民に必要な法的価値判断の意識・能力を育成の過程を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの達成度が(3)である理由は,新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い,計画当初に予定していたアメリカおよびスウェーデンの現地の追跡調査の計画や,小・中学校での法教育の授業の実践の計画を変更せざるをえなかったためである。現地の追跡調査の困難な状況を補うべく,ICT機器やオンライン環境を 生かして,現地の法教育研究の専門家と研究交流するよう心がけたが,調整等に困難が伴い,引き続きオンライン環境の整備に経費と時間がかかった。 具体的な進捗状況は,以下の三つの通りである。 1.日本の小・中学校の法的価値判断の意識・能力の育成を目指す法教育の授業モデルの精緻化を試みた。上記の理由により,日本の小・中学校の法教育の授業の参観は実現できたが,法教育の授業モデルの実践には至っていない。 2.令和3年度に引き続き,市民に必要な法的価値判断の意識・能力の育成という視点のもとで,法教育,権利・公正学習等に関する基礎的資料の分析を行ない,法教育の意義と可能性を十分に考察できた。 3.アメリカの各州の社会科と法教育やスウェーデンの権利・公正学習の取り組みを追跡調査し,アメリカおよびスウェーデンにおける法的価値判断の意識・能力の育成を目指す法教育の現状と課題を検討できた。アメリカの各州の社会科と法教育の取り組みの追跡調査は,ICT機器やオンライン環境を生かして,現地の法教育研究の専門家から,意見聴取・情報収集を行なったが,まだ不十分の状況にある。スウェーデンの権利・公正学習の取り組みの追跡調査は,まだ不十分の状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に得られた研究成果から,市民に必要な法的価値判断の意識・能力の育成を目指す日本の小・中学校の法教育の理論的・実践的枠組の一端が明らかになった。新型コロナウィルス感染症の拡大の状況を踏まえて,引き続き,現地の追跡調査の困難な状況を補う工夫を積極的に取り入れる必要がある。現地の追跡調査の困難な状況を補うべく,ICT機器やオンライン環境等を生かして,現地の法教育研究の専門家と研究交流することを推進する。さらに,アメリカおよびスウェーデンに,フィンランドを加える等工夫をして,文献調査に重点を置くことにする。 令和5年度には,引き続き,令和4年度に残された課題に取り組む。(1)日本の司法システム論,日本の法文化論の知見からの検討,(2)日本の小・中学校における法教育の授業モデルの評価を行うことで,日本の小・中学校における市民に必要な法的価値判断の意識・能力を育成するための課題を解明する。さらに,日本の小・中学校の法教育における法的価値判断の意識・能力の育成原理の提示を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い,計画当初に予定していたアメリカおよびスウェーデンの現地の追跡調査の計画や,小・中学校での法教育の授業の実践の計画を変更せざるをえなかったためである。現地の追跡調査の困難な状況を補うべく,ICT機器やオンライン環境を生かして,現地の法教育研究の専門家と研究交流するよう心がけたが,調整等に困難が伴い,引き続きオンライン環境の整備に経費と時間がかかった。次年度使用計画は,以下の通りである。 1.日本の小・中学校の法的価値判断の意識・能力の育成を目指す法教育の授業モデルの精緻化を試みる。そのため,旅費を使用することで,日本の小・中学校の法教育の授業の参観や,法教育の授業モデルの実践を行う。 2.可能な限り,旅費を使用することで,アメリカの各州の社会科と法教育やスウェーデンの権利・公正学習の取り組みを追跡調査する。困難が伴う場合には,アメリカの各州の社会科と法教育の取り組みの追跡調査は,ICT機器やオンライン環境を整備するなど工夫して,現地の法教育研究の専門家から,意見聴取・情報収集を行なう。
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