研究課題/領域番号 |
20K02886
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
土屋 聡 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (20432891)
|
研究分担者 |
栗山 雅央 西南学院大学, 国際文化学部, 助教 (20760458)
長谷川 真史 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (40706769)
奥野 新太郎 岡山理科大学, 教育学部, 准教授 (60706761)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 漢文学教育 / 関連教材 / 高校国語 / 遠隔授業 / 普通高中語文課程標準 / 語文 |
研究実績の概要 |
土屋聡「中国の古典教育における関連教材の意義について-その『語文』教科書での利用をめぐって-」(『教育実践学論集』22号、2020年12月23日受理)では、中華人民共和国における『語文(日本の「国語」に相当)』教科書本文と関連教材との関係を調査し、関連教材を利用する効果として、読解のポイントを明確にすることや、学習者が独力で教科書本文を読解するために必要な視点を提供することを明らかにした。 長谷川真史ほか「遠隔授業における古典・語学――実践報告と展望」(中唐文学会 2020年10月9日、パネルディスカッション)では、今般のコロナ禍において教育現場が遠隔授業を余儀なくされたことを受けて、高校・大学における「漢詩を作ろう」の実践例を報告した。作詩を楽しむことや、漢詩の型式に沿った平仄の配置はできている一方で、漢文語法――とりわけ対句における漢文語法への理解度が低いことが分かった。意見交換では、遠隔授業(リアルタイム型)におけるインタラクティブな活動例や授業案についての意見が寄せられた。 栗山雅央「漢文教材としての杜甫「石壕吏」に対する王粲「七哀詩」の活用」(『西南学院大学言語教育センター紀要』第11号、2021年3月)では、中国「語文」教育の方法を援用しながら、現在の高校国語「古典B」に載録されることの多い杜甫「石壕吏」を対象とし、現行の教科書に見える発問や学習活動の中で、王粲「七哀詩」との比較を通じたよりよい理解へと繋がるがる実践例を提示した。 我が国の「高等学校学習指導要領」(国語)に相当する「普通高中語文課程標準」(2017年版)の翻訳については、当初計画していた古典教育に関連する「課程内容」の翻訳案を作成したが、最終報告までに『課程標準』全体まで拡大した訳注の作成を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究計画の進捗状況について、【1】~【3】に分けて以下のように報告する。 【1】「語文課程標準」の翻訳。当初計画していた古典教育に関連する「課程内容」の翻訳案を作成した。本研究グループ全員で検討した結果、最終報告までに『課程標準』全体まで拡大した訳注の作成を目指すこととした。 【2】「語文」教科書の古典教材の調査。公益財団法人 東洋文庫において過去の「語文」教科書及び教師用教学書の収集・調査を行なった。ただし、新型コロナの流行及び緊急事態宣言発令等により、東京在住者(長谷川)以外は充分な調査を行うことができなかった。 【3】「語文」教科書における関連教材の研究。研究代表者および研究分担者それぞれの専門領域に係る教科書教材を対象として調査・研究を進めた。土屋聡「中国の古典教育における関連教材の意義について-その『語文』教科書での利用をめぐって-」(『教育実践学論集』22号、2020年12月23日受理)、栗山雅央「漢文教材としての杜甫「石壕吏」に対する王粲「七哀詩」の活用」(『西南学院大学言語教育センター紀要』第11号、2021年3月)として研究論文を公刊した。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度の活動については、以下の方針で行うこととする ・本研究課題はあくまでも国語の授業のための教材開発・教材研究として遂行する。またその際、言語学習の側面について充分に考慮する。 ・日中比較の際には、中国における古典と日本における古典(古文・漢文)という位置づけの差異に注意する。 ・現在の教育現場での漢文の授業時数・使用教材・問題点等の把握に努める。 ・現在、世界的に新型コロナウイルスが流行しており、2021年度に予定している中国での文献調査も遂行困難であることが予想される。そこで、調査範囲を中国国外でも入手可能な人民教育出版社版『語文』教科書に限定して、研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、「語文」教科書の古典教材の調査として、国立国会図書館・公益財団法人 東洋文庫への国内出張を予定しており、地方在住者3名(土屋・奥野・栗山)の旅費を予算に計上していた。しかし、新型コロナの流行及び緊急事態宣言発令等により東京への出張・調査ができなかったため、その旅費について次年度使用が生じた。 次年度以降の状況も予測困難ではあるが、ワクチン接種の普及等で事態が好転した場合に、国内出張旅費として使用したい。なお、出張先(国立国会図書館・公益財団法人 東洋文庫)、出張目的(「語文」教科書の古典教材の調査)についての変更はない。
|