本研究は、学習アセスメントを活用して組織的授業研究を可視化し、カリキュラム・マネジメントを通じた教員のミドルリーダーの職能成長を実現する持続的な授業研究のあり方の提言を目的とした。長年にわたって調査研究に協力してもらった秋田県のミドルリーダーたちの授業研究をベースにしてまとめた論文を、秋田大学での学会発表を経て、秋田大学の論文誌に載せることができた。秋田で長年教職にあった人々の査読を経たので、外部から観察した秋田の質の高い授業の核心的部分について、的を外していないとの確証を得た。秋田の子どもたちの高学力の秘訣は、秋田の教師たちが世代間の対話を通して大切にしてきた文化的な授業台本であると、実践のバックグランドを言語化して他地域の人々に伝えることが可能となった。 また、東京においては、ミドルリーダーとして様々な責任ある職務を引き受け、学級のみならず学校改善に尽力してきた小学校中学校の教師のインタビューをもとに、多忙な中にも教師としての働き甲斐を見出す姿を引き出してまとめることができた。さらに、東京の中でも最も大きな地区の教育長にインタビューを実施し、教職を目指す学生へ教職の魅力を伝える現場での取り組みおよび教育委員会としての取り組みについて、取りまとめることができた。行政、現場との連携によって、表面的で流動的な情報に惑わされることのない教職の職業的魅力を伝えられるよう、ミドルリーダーの存在意義の再確認を通して協力体制を構築することの重要性を共通理解した。また、教員養成を行い、教師教育を実施する大学側の教師教育者としての責任のあり方を自覚化する必要性を指摘することができた。
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