2023年度は,2022年度に計画・実施した本調査1と2を分析した。そして,その分析をもとに,学習過程の有効性を検証した。 第一に,本調査1を通じて,問題設定の中でも「証明の活用」における議論の蓋然性と多様性に着目した学習過程の有効性を検証するとともに,その過程における「証明活用」の具体的な様相を分析した(辻山・木暮,2023;加藤・辻山,2023,柴田・四之宮・小泉・垣野内,2023)。このことにより,研究計画当初に予定していた目的を達成することができた。 第二に,本調査2を通じて,問題設定における「証明の活用」を方程式による「説明の活用」に拡張した形での学習過程を新たに考案するとともに,その可能性と意義を検討した(東平・榎本・四之宮・藤崎,2023)。この検討により,「証明の活用」を中心としたこれまでの研究を,証明を含みより広く「多様な説明の活用」に焦点を当てた新たな研究課題の着想(2024年度開始の基盤研究B)につなげることができた。 また,上述の4つの発表が日本科学教育学会年会における「課題研究」に採択され,研究分担者・研究協力者のほぼ全員による成果発表を行うことができた。さらに,2022年度の発表(加藤・辻山・柴田,2022)が評価され,日本科学教育学会年会より「年会発表賞」を受賞した。 2022年度の実施状況報告書に記載した通り,当初の計画では公立中学校ではなく公立小学校で行う予定であった本調査2を,公立中学校で行うことになったが,公立中学校で2種類の異なる方向性で具体化を行うことにより,考察の幅を広げることができ(枠組み準拠型と枠組み拡張型),研究成果の質や意義を担保することができた。
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