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2020 年度 実施状況報告書

現代工芸作家の視点から捉える工芸教育の理論及び実践研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K02906
研究機関東京藝術大学

研究代表者

長尾 幸治  東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (50782364)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード工芸教育 / 美術教育 / 工芸制作
研究実績の概要

2020年度は、作品・文献研究を中心に行った。本年度は工芸概念及び工芸教育を現代の工芸作家の視点から見つめ直すことで、工芸作品制作における、造形のあり方にその可能性を見出すことができた。現在の工芸教育では、用途や伝統、クラフトデザイン的な観点が強く、素材や技法との対峙から生まれる、工芸作品制作過程に目が向けられていないといえる。そのため、工芸教育をより発展的なものにしていくためにも、造形芸術教育としての工芸教育のあり方を示していく必要性が明らかになった。当研究成果は「現代工芸作家の捉える工芸教育の可能性」をテーマに研究ノートとしてまとめ、所属研究会に投稿を行い、査読後、掲載が確定した。さらに研究ノート執筆過程で得た知見をもとに、若手工芸作家を交え議論を行った。若手工芸作家との議論では、工芸という領域でまとめられていながらも、それぞれの作家の工芸に対する考え方の違いが確認できた。工芸作家との議論では、一口に工芸といっても素材や技法、教育を受けた場によって、各々の工芸に対する考えに差異が生じるため、次年度の展示発表では、こうした多様な工芸のあり方を示すことで、これからの時代における工芸教育の可能性を提示する趣旨を共有した。そのうえで、工芸の多様性と、その造形のあり方の共通点と差異を、作品及び、テキストで提示することで、工芸教育の造形教育としての可能性の一端を示すという展示発表の大枠を作り上げることができた。
他にも、自主的におこなっている研究会では、工芸教育の現状についての調査報告を行った。参加者はアーティストや学校教員、教育養成機関の教員など、多岐にわたり、様々な観点から議論を行った。本研究会の議論によって、現在の工芸教育のデザイン教育的方向性や、技術教育との関係性など現在の工芸教育の位置付けやその問題点などを再確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度は新型コロナウィルス感染症の影響による、所属機関の立ち入り制限により、資料収集、打ち合わせ等に普段以上の時間と労力を要した。文献・作品研究については、図書館等、文献取集できる施設の制限により、資料が手に入りづらい状況が続いてはいるが、概ね順調に進んでいる。制作研究については、次年度の展示発表に向け、展示場所の決定、及び協力作家への依頼、承諾を受けており、開催に向け準備を進めている。しかし、教育実践研究においては授業実践研究を行う予定である、中高一貫校についても休校による学習課程の遅れなどの理由により、2020年度は当研究の授業実践実施のための打ち合わせが思うように進まなかった。しかし、当初の予定とは異なるが、同一校で新たに企画されている教育プログラムにおいて教育実践を行う目処がたった。そのため、全体の計画としては4、5月時点で相当な遅れを予想していたが、想定していたよりは進んでいるといえる。

今後の研究の推進方策

2021年度は制作研究における展示発表を行うため、協力してくれている若手工芸作家との打ち合わせを重ね、具体的に準備を進めていく。教育実践研究についても、実施する場が決定したため、第一回の教育実践として準備を進め、実施する予定である。文献研究についても、制作研究の展示発表との関連性を持たせながら進めていく予定である。また、本年度は研究代表者の所属変更により、研究環境の変化が予想されること、及び今年度の研究の遅れを取り戻すために、前所属機関から新たに研究分担者を追加する予定である。
他にも研究成果の発表方法についても新たな試みを計画している。新型コロナウイルス感染症の影響は依然落ち着きを見せないため、研究発表の場もオンライン化が進んでおり、従来のようにシンポジウムや研究会で多人数を集めることは困難である。そのため、今後、研究成果の発表の方法の一つとしてWeb上にHPを作成し、そこから研究内容、成果を発信することで、多方面からのアクセスを可能とすることを計画している。研究の総括等、従来では紙媒体の報告書を作成する例が多いが、紙幅の都合やレイアウト上の問題から、本研究のように文献・作品研究、制作研究、教育実践研究と研究方法が多岐にわたり、写真、図表等が多くなるものについては研究内容を十分にまとめることができないことも考えられる。こうしたことからも従来の方法に加え、HP上で研究内容、及び成果をパッケージ化し、社会に発信することは効果的であると考えている。この点についても新たに研究分担者を追加し、研究を進めていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

2020年度は新型コロナウィルス感染症の影響から、所属機関の立ち入り制限、図書館等資料集ができる機関の制限等により、予定していた資料収集や、出張が困難となり、使用額に変更が生じた。2021年度は展示発表にかかる費用が多く見込まれること、及び2022年度に予定していた教育実践の機会を得たため、その試作用材料、副教材作成等の準備費用として使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] 工芸作家の視点から捉える工芸教育の可能性2021

    • 著者名/発表者名
      長尾 幸治
    • 雑誌名

      美術教育研究

      巻: 26 ページ: ー

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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