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2021 年度 実施状況報告書

現代工芸作家の視点から捉える工芸教育の理論及び実践研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K02906
研究機関横浜美術大学

研究代表者

長尾 幸治  横浜美術大学, 美術学部, 助教 (50782364)

研究分担者 加藤 大介  東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (90887225)
阪上 万里英  東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (50912101)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード工芸教育 / 工芸 / 美術教育
研究実績の概要

本研究は現代の工芸作家の視点から工芸教育を捉え直し、これからの時代の工芸教育の可能性を明らかにすることを目的として、文献研究、制作研究、教育実践研究の3つの側面から研究を進めている。2021年度は中学校での教育実践研究及び、制作研究の一環として若手工芸作家10名による展覧会を企画、実施した。
教育実践研究では、前年度の文献研究で論じた現代の工芸教育の可能性を基に、中学校1年生を対象とした「美的で実用性を持つ制作物」という一般的な工芸の捉え方の範疇に囚われない、工芸教育の実践を行った。本実践は、現代の工芸の諸相から見いだされる、「ものづくりという表現を通して自己の外の事物について考えること」に着目した教育実践であり、特定の技法の学びだけではない、ものづくりという表現自体の意味について考えることを目的とした。ただし、本教育実践を行う中で、中学1年生という段階での工芸やものづくりの概念的な理解は難しいと思える部分もあった。この点を次回の課題として、この部分をより分かりやすく伝えるために、制作研究を基にした授業用教材であるハンドブックを作成中である。制作研究での展覧会では、現代の工芸と工芸教育を接続する試みとして、工芸の現在性を探り、これからの時代の多様な工芸教育の在り方を描きだすことを目的として、各作家の作品と工芸を学び制作を続けている各作家が捉える工芸観を言葉も含む絵や図として提示することを行った。本展覧会では200名程度の来場があり、本研究を含め工芸教育に対する関心の高さがうかがえた。さらに自身も事務局運営に携わる小規模な研究会で、本展覧会の実践報告を行った。発表では展覧会の趣旨や実際の展示風景などの紹介を行い、質疑では、展覧会独自の試みであった〈工芸〉を示す図についてその意味や今後の方向性などについての話題が挙がり、今後の展開への新たな知見を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2021年度は制作研究の展覧会の開催や、授業実践を行うことができたため、本研究は概ね順調に進行している。研究実績の概要にも記した通り、制作研究の展覧会では多くの来場があり本研究に対する関心の高さをうかがうことができた。また、本展覧会の実践についての協力作家から得たフィードバックを集め、ここで得られた知見についても今後の研究に活かしていく予定である。教育実践研究については、研究開始当初は2022年度に実施予定であった教育実践が2021年度に実施できたこともあり、予定より早く進行している。授業教材として制作予定であるハンドブックについては、制作研究での展覧会で得た資料や知見を取り入れ制作を進めていることから、現段階で大枠が完成している。ここから再度、今回の授業実践で得られた知見を含めブラッシュアップしていく予定であり、2022年度の教育実践に合わせて現在作成中である。一方で、2020年度の報告で新たに本研究の発信方法についてWebを使用した方法を検討課題として挙げた。この点についても準備を進めているが、恒久的なコストの問題から公開期間等を含め現在検討中である。これらのことから総合的に考えると現時点での本研究の全体の進捗状況は概ね順調に進行しているといえる。

今後の研究の推進方策

2021年度は制作研究、教育実践研究を中心に実践研究を重ねてきた。最終年に当たる2022年度はこれらの実践で得た知見を文献研究と共にまとめていく予定である。これまでの研究で、工芸教育が自己の外のものとの関係を構築しながら、ものをかたちづくることを通して、自己が「かたちづくられる」学びであるという着想を得た。今後はこの着想をもとに工芸教育の持つ美術教育と技術教育の両領域をまたがるという特性に着目し、21世紀型の工芸教育独自の創造性について明らかにしていきたい。そのために、文献研究では今一度、手工教育や工芸教育の歴史や思想に立ち返り、教育におけるものづくりの意義という観点から工芸教育を捉え直すことを試みる予定である。また、制作研究においては、工芸教育を発展的に捉えるために、昨年度の展覧会でもみられた3Dプリンターといった新技術を取り入れた作品の考察から工芸分野における新技術の位置付けについて考察を進めていく。教育実践研究では本年も中学校での教育実践を予定している。本実践から再度課題点を明確にし、制作研究を共同で進めている鑑賞教材用ハンドブックの作成を進めていく予定である。
また、2022年度は本研究の総括として、3つの側面から得られた知見を統合していく段階であり、所属する学会、研究会での発表や、報告書の制作を予定している。3つの側面から得られた知見を統合することによって、制作者の立場から教育を捉え直す意義についても明らかにすることができると期待できる。さらに、工芸教育の発展的展開として、既知のものから、新たなものを生み出しいてくものづくり的思考から、新たな発想や構想を生み出す教材開発の理論と実践の新たな視点を提示していきたい。

次年度使用額が生じた理由

本年度、完成予定であった教育実践研究に使用するハンドブックの作成が本年度の教育実践で見出した課題点を修正していくため、完成が年度をまたぐこととなり、印刷費等の製作費を消化することができなかった。
次年度使用額についてはハンドブックの印刷費等ハンドブック製作費や、制作研究における新技術を取り入れた工芸作品の考察のための制作費等として使用する予定である。

備考

展覧会「始点と交点-工芸のモーメントー」2021年9月10-12.17-20日@旧平櫛田中邸アトリエ(東京 上野桜木)

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公開日: 2022-12-28  

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