研究課題/領域番号 |
20K02911
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
橋崎 頼子 奈良教育大学, 学校教育講座, 准教授 (30636444)
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研究分担者 |
北山 夕華 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (30547790)
川口 広美 (前田) 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (80710839)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 市民性教育 / コンピテンシー / 間文化的対話 |
研究実績の概要 |
本研究は、学校における少数派生徒の特別なニーズへの適切な応答と共に、全ての生徒に対する市民性教育を推進する教師教育の必要性という前提に立ち、欧州評議会の市民性教育の取組みを参照しつつ、特別なニーズに対し資源の再分配を行うことで応じる「公正」と、文化の仲介者の育成を目指す「間文化的対話」の視点を含む日本の教師教育プログラムの開発・実践・検証を行うことを目的としている。本研究は4か年計画であり、2020年度はその一年目である。 一年目の課題は、欧州評議会や日本における市民性教育および教師教育に関する先行文献を収集・検討することであった。第一に、日本国際理解教育学会において、グローバル時代における市民性教育の理論と実践の論点と課題に関する文献レビューを行った(橋崎・川口2021)。当該学会では「ナショナル・アイデンティティ教育の相対化」という視点から市民性教育が論じられてきている。理論面では、①国民に対して地球市民を対置することで国民の相対化を図る方向と、②国家を民族や文化ではなく民主的議論を通した公共空間ととらえることで国民概念を再構成する方向が提案されてきた。実践面では、一国家における複数の言語・文化や文化の変容可能性を、相互交流や疑似的体験を通して扱う実践が見られた。しかし、文化間の仲介者育成や社会の構造的な公正さを追求する実践という点で課題があることが分かった。 第二の成果として、欧州評議会の提示する市民性教育のコンピテンシーが、欧州の過激主義的な行動に走る若者が結果的に社会から排除されているという問題(「間文化的対話」の不調)に対し、どのように機能しうると考えられているのかについて欧州評議会の報告書よりまとめた(橋崎2021)。またコンピテンシーを形成する具体的事例としての歴史教育カリキュラムの考察を行っており、次年度論文として発表できるよう準備を行っている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一年目は、先行研究レビューを包括的に行い、欧州評議会の市民性教育のコンピテンシーモデルの作成者にインタビューを行うことを計画していた。市民性教育の先行研究レビューについては、一部を研究成果として公表できたが、教師教育関係についてのレビューは二年目の課題として残っている。また新型コロナウイルス感染症のため、海外出張ができず、コンピテンシーモデルの開発者へのインタビューを行うことができなかった。二年目はオンライン形式による調査が可能かどうか検討を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、以下の四点を計画している。第一に、一年目で検討した、欧州評議会の市民性教育のコンピテンシーモデルと具体例としての歴史教育についての調査を論文化することである。第二に、間文化的対話、公正といったキーワード教師教育の実践の先行研究レビューを行うことである。第三に、すでに実践している多様性理解に関わる日本の教師教育における学生の学びの様子について考察を行うことである。第四に、大学間をまたいで公正と教師教育に関するシンポジウムの開催を模索することである。申請時の研究計画書では、二年目に現地調査を予定していたが、大幅に研究計画を変更する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一年目は、先行研究レビューを包括的に行い、欧州評議会の市民性教育のコンピテンシーモデルの作成者にインタビューを行うことを計画していた。しかし、新型コロナウイルス感染症対策の関係で大学の業務が増え、予定していた通りに研究を進めることができなかった。次年度は柔軟に計画変更しながら、先行研究レビューに関する書籍購入や、オンラインでの調査や共同研究に関わる設備の購入を予定している。
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