研究課題/領域番号 |
20K02912
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
正岡 さち 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (30194161)
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研究分担者 |
田中 宏子 滋賀大学, 教育学部, 教授 (00324559)
榎本 ヒカル 相模女子大学, 栄養科学部, 教授 (00423517)
亀崎 美苗 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (00531336)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 住文化 / 伝統文化 / 住生活 / 住教育 / 和室 / 所作 / 横断的学習 / クロスカリキュラム |
研究実績の概要 |
他教科との連携を視野に入れて、生活を総合的に捉えた家庭科住生活の教材を開発し、現代における住生活文化の継承・創造のあり方を検討することを目的として研究を行った。今年度は、昨年度に行った小学生を対象とした調査をより詳細に分析し、論文にまとめた。得られた結果は下記の通りである。 ①児童に伝統的和室の画像を呈示し、その空間を身近に感じるかどうか尋ねた結果、約3割の児童が身近に感じていなかったが、居住している住宅に伝統的な和の要素がある程、伝統的和室を身近に感じる傾向にあった。同時に、SD法により、『畳の部屋』のイメージを尋ねた結果、静か、すっきりしている、触り心地が良い等のイメージを持っている一方で、歴史的建造物であり現代の生活に合っていない寄りのイメージを持っており、児童は、「和室らしさ」は把握しているものの、実際の生活においては、現在の生活に合わない身近ではない空間と考えている様子が伺えた。 ②しかし、伝統的住まいに対する学びについて尋ねた結果では、約65%の児童が興味を持っており、約8割の児童が住まいの伝統や文化について学びたいと思っていた。これは、自宅に伝統的な和の要素があったり、重要文化財住宅を見たことがある程、その傾向が強く、実際に和の空間を体験することが大切であると考えられる。 以上の結果から、小学生は、「和室らしさ」のイメージは把握しているものの身近な空間ではないと考えており、実感を伴った「住まいの伝統や文化」の教育には、単なる知識として終わらせない工夫が求められ、それらは、実際の伝統的空間を体験することが効果的であると考えられる。しかし、これらの学習は、小学校においては家庭科だけでは難しく、社会や道徳・国語等とのクロスカリキュラムによって小学校で日本の住生活文化に関する知識の基礎をつくり、中学校以降の学びにつなげることが有効ではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の予定では、幅広い年齢層と全国の男女を対象とし、和の住まいについての知識の現状、和の住まい方の現状、和のくらし・住まいについてどのように教わりたいか、どう次世代に伝えたいか、等についてWEB調査を行う予定であった。しかし、2021年度の学会における「和室」や「伝統文化教育」に関する研究について情報収集したところ、類似の研究がいくつか行われていることが明らかとなった。これは、「伝統文化教育」が新たに指導要領に入ってきた内容であることから、テーマとした研究が増えたものと考えられ、そのため、本研究の調査内容の見直しを行った。 その結果、調査内容についてはハード面の項目を減らし、洋室にはない伝統的住まいの中での独特の所作も含めた住まい方等のソフト面を中心とした調査内容とする方向に変更することにし、調査票を検討しなおした。再検討を始めた時には、令和3年度末にWEB調査を行う予定であったが、研究代表者・共同研究者ともに年齢的に校務等で多忙であったことから、調査票の見直しのための打ち合わせになかなか時間が取れず、急いで中途半端な調査をするより、じっくり調査票を練り、令和4年度当初の実施に延期することとした。
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今後の研究の推進方策 |
当初から予定していたWEB調査を行う。内容は、幅広い年齢層と全国の男女を対象とし、和の住まいについての知識の現状、和の住まい方の現状、和のくらし・住まいについてどのように教わりたいか、どう次世代に伝えたいか、等についてである。特に、洋室とは異なる和室(畳の部屋)ならではの独特の所作等を含めた住まい方を中心とした項目とする。 その結果から、現代の住生活文化に対する意識や現状を把握し、有形文化、無形文化としての和室と和の住まい方の特異性を明らかにする。その結果から、教師が何をどのように教え、児童・生徒にどのような資質・能力をつけていくかのが望ましいかを検討する。 さらに、令和3年度までの結果及び上記の調査をもとに、家庭科を中心として、小・中・高校の様々な教科担当の教員を対象として担当教科における和の住生活文化に関連した内容の扱いに関するアンケート調査(WEB調査)を行う。家庭科以外の教科の教員の調査を行うのは教科間の連携を考えることを目的としており、他教科から見た連携の可能性を探ることによって、同じ校種における新たな横の連携及びカリキュラムの展開を見い出すためであり、小・中・高を対象とするのは、縦の連携及びカリキュラムの展開を見い出すためである。 最終的には、家庭科における、和室と和食や和服との繋がり、住まい方・暮らし方の面での伝統文化教育の連携を踏まえた上で、国語古典、地理歴史、理科など他教科との関連を視野に入れ、生活を総合的に捉え・家庭科を中心に据えた「生活文化の継承・創造についての学習」教材開発につなげる予定である。 なお、結果の発表については、当面は国内における学会発表及び論文発表を中心とし、国際学会に関しては、今後の開催状況等を見ながら決める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
WEB調査を行う予定であったが、調査内容の見直しに時間がかかったため、令和3年度に調査を実施できなかった。調査内容がほぼ固まったことから、今年度、早急にWEB調査を行う。WEB調査は信頼のできる調査会社に委託するため、調査費用として使用する。 また、学会出張を予定していたが、コロナの影響により、学会がオンライン開催になったことから旅費の支出がなかったこと、また、研究補助のアルバイトを雇うことが難しかったことから、これれらの支出がなかった。そのため、その分の予算は、今後の調査費用として使用する予定である。
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