研究課題/領域番号 |
20K02916
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
鈴木 慶子 長崎大学, 教育学部, 教授 (40264189)
|
研究分担者 |
劉 卿美 長崎大学, 言語教育研究センター, 教授 (00346941)
宮本 友弘 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (90280552)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 書字過程の定量的測定 / 測定ツールの開発 / 発達障害児 / 読み書き障害 / 検査 / デジタル先進国 / 音読の介入 |
研究実績の概要 |
コロナ感染拡大のために、計画調書提出時に計画していた附属小学校での調査が実施できなかった。したがって、気持ちを切替え、2020年度では、以下4点を集中的に推進した。 ①書字過程の定量的計測が簡便に行えるような調査ツールの改良をワコム社と共同で進めた(メール、オンラインミーティング)。その結果、3月末に、a書字開始時刻、b書字終了時刻、c書字所要時間、d平均書字速度、e停止回数、f停止時間、g書字圧傾向の7観点が、データを流し込んだアプリケーションソフト上で自動的に提示できるようになった。②発達障害児を対象にして書字の基礎研究を行っている研究者と交流し、本研究に対してアドバイスを受けた(メール、オンラインミーティング)。当該分野では、読み書きの程度を的確に見極めることが、支援を的確に行うことと直結するという。そのために、書字力の基礎調査に基づいた検査が数種類開発されている。それらを本研究に応用することができないかを検討協議した。2021年度では、健常者を対象にして、開発したツールを用いて調査を試行する計画でいる。③海外の書字教育に関する文献を捜集した。デジタル先進国(アメリカ、ノルウエー、フィンランド等)の研究論文、実践報告等を捜集し、本研究の国内外における位置づけを相対化していった。特に、1995年に発表されているChristine Haas著『Writing Technology:Syudies on the Materiality of Literacy』の記述されているには、本研究には欠落している文明的な視野からの洞察があり、非常に参考になった。④既存のデータを再解析して、書字に内包されている特質を探った。小学生を対象にした書字データに、他のデータを組み合わせて、再解析し、考察を行った。その結果、音読の介入は、書字速度を向上させる効果があることが見出された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度末からコロナ感染が拡大しており、小学校が臨時休校になったり、オンライン授業になったりしている状況から判断して、計画調書提出時に計画していた実地の調査は困難であることを予想していた。 その判断に基づいて、前項「研究実績の概要」に記述した①③④に計画を切り替えることを腹案としていた。また、有益だったのは、③を進める中で、発達障害児を対象とした分野で、書字の基礎研究が進んでいることを知り、該当の研究者に連絡を取り、本研究に対するアドバイスを受けることができたことである。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは、①5月末までに、3月末に第1次段階の改良が完了した測定アプリケーションソフトを用い、大学生を対象として予備調査を行う。②6月中に、測定アプリケーションソフト機能の微調整を行う。③7月以降、大学生を対象にして、本調査を実施する。おそらく、今年度も小学生を対象とした調査は、困難であることが予想されるからである。④後期は、その解析を行う。 ただし、コロナ感染の状況によっては、①並びに③の調査が実施できないこともあることを想定している。その場合は、既存のデータを、改良したアプリケーションソフトに流し込み、解析し直す。 さらに、コロナ感染が終息していれば、申請時に計画していたノルウエーのDejiHandクラスを見学を実施する。それが実施できない場合は、先方の研究者との連絡及び研究協議を行いつつ、見学計画を練り直しておく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大のために、小学校で予定していた調査が実施できなかった。そのため、本年度を調査ツールの開発と、既存のデータの再解析に専念するすることとした。開発料に関しては、調整段階にあるために、未支払いである。待機している期間には、既存のデータの再解析に加えて、国内外文献の捜集及び国内外協力者との協議(メール、オンラインミーティング)を進めた。 2021年度には、小学校での調査が可能になった時点で、調査を実施して、実地に使用に即して、アプリケーションの吟味を行う。
|