本研究は,子どもの認知・理解の実態を捉えようとする研究であり,個人の知識構築の過程を明らかにすることを最終的な目的としている。これまでの研究において,知識獲得に見立てが大きな役割を果たしていると考える立場から,研究の1年目は,幼児の見立てに関わる活動(ふり,ごっこ等)に着目し考察を行った。幼児の活動の中には,毛糸を焼きそばに見立てることなどその形状から見立てを行っていたり,フォークで字を書くふりをしたり双眼鏡(と見立てているもの)で監視をするふりをするなどのふり行為も確認できた。 次に,幼児は他の幼児とともに様々な活動をする中で,知識を獲得したりイメージを広げたりすることの方が多いのではと考え,これを見立ての共有による理解と捉え,研究の2年目はその実態について考察した。そこでは年少の3歳児から年長の5歳児まで,いずれの学年の幼児においても見立ての共有が行われていたことが確認された。また,保育者による共感や言葉かけといった介入が行われており,そのことが見立ての共有やイメージの拡大に寄与している可能性が十分にあることが示唆された。 研究の3年目(最終年度)に当たる本年度は,対象を小学1年生に移し,見立てが算数の授業の中でどのように表れどのような役割を果たしているかについて考察を行いまとめた。小学1年生は,まずは見立てに基づくネーミングを行っていた。ネーミングは,図形を区別するためには必要なことであるが,図形を捉える視点を与えており,それに見立てが役立っており,クラスでの共通の認識につながっていた。また,見立てが図形の中に他の図形を見るときの視点を与えていることが確認できた。影絵における色板並べは,図形の分析的思考が必要であると考えられるが,小学1年生のうちの少なくとも数人は,与えられた図形の中にすでに形作った他の図形の全体またはその一部を見出すことができていた。
|