鹿児島県の伝統的工芸品である刃物をモデルとしてものづくり教材として改善された加熱法を採用し、教員養成課程における金属加工実習にて刃物製作を行った。従来に比べ、安全性や作業性、また効率性の向上が見受けられた。また、従来より製作物の包丁としての機能も向上していたことから、特に鍛造時の作業性が向上し、刃付け作業における成形性が改善されたと考えらえれる。 一方、教材としての導入を念頭に、伝統的な刃物製作法の最も特徴を示す技術の一つである、鍛接法の検討も行った。教育現場であることから、刃物鋼として弓のこに用いられる使用済の鋸刃を採用し、地鉄はホームセンター等で容易に入手できる低炭素鋼を用いた。鍛接剤は、ホウ砂とホウ酸ベースに配合比率、また鉄粉の有無などを比較検討したが、鉄粉を混合したものが有効であった。鍛接作業は刃物製作で提案したU字溝による加熱炉で行い、作業性を向上させるため地鉄にスリットを設け刃物鋼を挟み込む方法と採用した。接合状態は、接合面付近の金属組織観察および硬さ試験により評価し、空隙が比較的多いものの、炭素の拡散が確認されたことから十分な接合がされていたことが判明した。実際に刃付け作業を実施したところ、成形も可能であった。以上のことから、本来は刃物用材料は入手が困難であるが、学校現場でも入手が可能な材料で比較的容易に鍛接が行え、伝統的な鍛造技術を体験的に学ぶことができることを示唆した。
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