研究課題/領域番号 |
20K02922
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
板橋 夏樹 宮城学院女子大学, 教育学部, 准教授 (90733212)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 理科 / エネルギー概念 / 小学生 / 教授法 |
研究実績の概要 |
本研究では、小学校の教科「理科」で分かりやすい形でのエネルギー概念の導入のための準備として、2021年度は特にイギリスの初等教育段階の科学の教科書の分析と、公立小学校での参与観察を行った。 1.ケンブリッジ大学国際教育機構が提供する5~11歳を対象としたCambridge Primary Science curriculumに準拠した初等教育段階の教科書INTERNATIONAL PRIMARY SCIENCE Student's Bookにおけるエネルギー概念の導入の実態を調査、分析した。その結果、第1,2,4学年での教科書ではエネルギーの用語が使用されていないこと、第3学年で人体や植物、第4学年で植物の光合成、第6学年で力と動きの物理的内容でエネルギーの用語が用いられていた。 2.英国のナショナル・カリキュラム(1999)と2012年発表の草案、及び、初等・中等教育段階の理科の教科書と教師用指導書を対象に特徴を調査、分析した。その結果、①初等教育段階の植物や人体に関する内容でエネルギーを用いた表現をしているものの、第1、6学年で「エネルギーの用語を用いた説明をすべきでない」と言及しており、初等教育段階でのエネルギーの用語の扱いに変化が見られた。②初等教育段階の教科書では、第6学年で電気回路や食物連鎖の内容でエネルギーの用語が用いられていた。一方、教師用指導書では、第1学年の音、第2学年の電気回路の内容でもエネルギーの用語を使用した記述がみられた。このことから、実際の指導場面では、低学年段階からエネルギーの用語を使った説明がなされていることが推察された。 3.公立小学校の協力を得て、第6学年の単元「電気とその利用」の授業の参与観察を行った。この参与観察により、電気エネルギーのコンデンサーへの保存や、電気器具を用いたエネルギー変換に関する児童の発話データを取集することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.コロナ禍による影響のため、小学校からの調査協力を得ることの困難さがあった。参与観察を行う学級も当初計画したようには行かず、コロナ感染の波が収束したタイミングで実施可能な範囲で行った。また、参与観察では児童の発話記録の収集のために、ICレコーダーを用いたが、児童のマスク着用のため、記録した音声からの発話データの収集と判別が大変に難しく、その分析に時間を要しているため。 2.小学校各教科の教科書の収集し、その論文を学会誌に投稿した。その後、修正の指摘があったが、コロナ禍による学内業務の増加により論文修正の時間の確保に苦慮したため、完成が遅れている。現在、教科書分析のまとめた論文を再度投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の研究を進め、本研究で目的とする小学校段階におけるエネルギー概念の導入に向けた知見を得たいと考えている。 1.新たに入手した新学習指導要領に準拠した各教科の小学校教科書を分析する。これにより、教科横断的な視点でのエネルギーの用語の使用の実態を分析する予定である。 2.調査協力校の小学校第6学年の単元「電気とその利用」の授業の参与観察で得た児童の発話データの分析を進める。これにより、児童のエネルギーに関する理解の実態を明らかにする予定である。 3.海外の最新の理科の教科書の分析を行う。そこに掲載されているエネルギーの用語を用いた単元とその内容、学年、指導法の特徴を明らかにする予定である。
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