研究課題
小学生にエネルギー概念を教授する際の適切な内容・順序性を検討するために、以下の研究を行った。小学校の使用率の高い各教科の複数の出版社の教科書を対象として用語“エネルギー”の使用実態を調査した。その結果、エネルギーの形態と保存に関する学習場面ではこの用語がほとんど使用されていないが、人体の成長や食物に関するエネルギー変換やエネルギー資源の学習の場での使用が認められた。板橋(2019)は、児童が用語“エネルギー”から食物や人体や電気に関する言葉を多く連想することを明らかにしていた。その要因を探ったところ、児童は日頃目にする教科書から多くの情報を得ていると考えられるが、その各教科の教科書には、人体や食物に関するエネルギー変換やエネルギー資源に関するエネルギーの記述が多い。また、小学生を対象とした学習漫画の登場人物のエネルギーに関する台詞には「熱気球、ダイナミック、役に立つ、便利、遊べる、車、新しい、遊べる」等の言葉があり、液体のようなもの、燃料としての資源、消滅・変換できるものとして表現されていた。これらが児童のエネルギーに対する見方に影響していると考えらえた。次に、エネルギー概念を小学生に教授する際の適切な内容・順序性を検討した。英国の初等教育段階の教科書におけるエネルギーの学習では、第3学年での食料の学習をエネルギーの理解の出発点としていることや、光合成における光エネルギーの関わり、位置エネルギーや内部エネルギー等、エネルギー変換、伝達を扱っていた。これらの扱いは米国の主要な教科書にも共通していた。日本では物理分野での導入が主であるが、児童に身近な生物分野での導入後に、物理分野での学習を学習することが考えられた。また、実験活動場面での児童の実態調査から、教師の意図的な介入がなければ、児童自身で目前の科学事象とエネルギーの関係に気づくことのできない点も明らかにした。
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宮城学院女子大学発達科学研究
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宮城學院女子大學研究論文集
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