研究課題/領域番号 |
20K02926
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
鎌田 公寿 常葉大学, 教育学部, 准教授 (80708066)
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研究分担者 |
井上 亘 常葉大学, 教育学部, 教授 (00424325)
濱川 栄 常葉大学, 教育学部, 教授 (00749939)
古市 将樹 常葉大学, 教育学部, 准教授 (30557301)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 公民科 / アクティヴ・ラーニング / 地域 / 主権者教育 / 政治的リテラシー / 「権力」 / 政治的中立生 / ICTの活用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「主体的・対話的で深い学び」を効果的に取り入れた、主権者育成のための地域型公民科授業を開発することである。本研究の追究課題は次の2つである。1つは、主権者育成に適した地域教材とはいかなるものか、2つは、静岡県下における高等学校での主権者育成の実際、およびその発展の方向性とはいかなるものか、である。前者については主として文献調査、後者については常葉大学の3つの附属高等学校(以下、附属高校)を中心的な対象とし、実地調査を行うとともに、公民科における主権者教育のフレームワークを作成し、それとすり合わせながら授業を構想し、効果を検証する。 3年目となる2022年度は、2021年度に、3つの附属高校のうちの1校にて実施した研究授業の課題を整理した。この授業では、静岡県の地域的課題であるリニア中央新幹線(以下、リニア)の建設をめぐる問題を扱い、「権力」批判を中心とする政治的リテラシーを育むことをめざした。授業をつうじて生徒は、建設を推進するJR東海のこれまでの対応に批判的眼差しを向けながら、建設をめぐる議論を前進させるための方向性を提案することができた。一方で、問題に対する当事者意識を十分にもつには至らなかった。この課題を克服するために、建設をめぐる議論に携わった静岡県の行政関係者を招いた授業を、2022年7月に同校にて実施した。この授業をとおして生徒は、主権者として建設的な議論に携わるうえで具体的に求められることを学ぶとともに、行政関係者との質疑応答をつうじて当事者意識を高めることができたと考える。 それと並行して、教育基本法第十四条二項の法的根拠や合理性を批判的に検討し、政治教育の根幹である政権批判のためには、二項の廃止あるいは改訂が必要であることを論じ、主権者教育における政治的中立性確保のための理論的基盤を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、2021年度の授業における課題をもとに、発展的な授業を新たに計画・実施することができた。その過程で、複数の高校において単発的に研究授業を実施するのではなく、同じ高校において(同じ生徒を対象に)連続性をもつ研究授業を重ねることで、学習効果を高めるとともに、本研究において開発した授業を地域型主権者教育の1つのモデルとして昇華させる方向にシフトした。この方向にそって研究計画を見直したうえで遂行したため、2021年度までの研究の遅れは解消された。一方で、新たな研究課題が浮かび上がってきたため、2023年度も研究を継続することとした。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、静岡県下の高等学校現場が、主権者教育をつうじてどのような「地域市民」を育もうとしているのか、また、主権者教育を担う教員の育成という点で、大学の教員養成課程に何を求めているのかを明らかする、という目的でインタビュー調査を実施する予定であった。しかし、研究授業を重ねるなかで、主権者教育が真に「権力」批判的であるためには、今回の一連の授業をつうじて生徒が得た学びの実態を把握し、学習者の視点から主権者教育を再構築する必要があるとの考えに至った。したがって、2023年度は、一連の授業を受けた生徒が、卒業後、そこでの学びをどのように振り返り、意味づけているのかを調査する。そして可能ならば、同校の在学生を対象に、インタビュー調査の結果に基づいた新たな主権者教育の枠組みを構築し、それにそった授業を計画・実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、3年目には実施が完了している予定であったインタビュー調査が未実施であり、これを次年度に実施するため。また、研究計画の変更に伴い、旅費の支出が減ったため。 次年度は、インタビュー実施に伴う旅費の支出、および、業者にインタビューデータの文字起こしを依頼した際に生じる支出等が見込まれる。
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