研究課題/領域番号 |
20K02931
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
青木 麻衣子 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (10545627)
|
研究分担者 |
鄭 惠先 北海道大学, 高等教育推進機構, 教授 (40369856)
平田 未季 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (50734919)
高橋 彩 北海道大学, 高等教育推進機構, 教授 (10326788)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 国際共修授業 / 合理的配慮 / 留学生 / ダイバーシティ・マネジメント / 多様性 / 授業実践 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、合理的配慮を必要とする留学生に対する教育上・授業実践上の支援の現状と課題を明らかにするとともに、ダイバーシティ・マネジメントの観点から、授業参加者が、自身の特性を理解し、互いの弱み・強みを補強し合えるような関係性の構築に資する教室内での工夫やしくみ、戦略を提示することである。それにより、これまでの国際共修授業における「多様性」の捉え方に変更を迫ると同時に、より実生活に即し、柔軟性を持った汎用的スキルの育成に資する授業展開を提案する。そのため、具体的には、日本国内の動向(平田)の把握とともに、留学生を多く受け入れ、かれらの多様性を国内学生の国際化の手段として活用するオーストラリア(青木)、イギリス(髙橋)、韓国(鄭)のモデルケースを収集し、その分析から、授業内で多様な差異を積極的・効果的に活用するための工夫・しくみを検討する。 2020・21年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により当初計画で予定していた国内・海外調査がほぼできなかったため、インターネット上に公開されている資料・文献を主たる情報源として、各国・地域の政策動向や制度についての整理を行った。2022年度からは、それまでに得られた情報・知見等をもとに研究の方向性を整理しつつ、国内外の関係機関・大学等の訪問により、関連情報、特にモデルケースとされる事例の収集を行なってきた。2023年度は、現在、研究代表者・分担者の所属機関で進める他の授業実践や研究との関連でも含め、韓国、オーストラリアおよびカナダの大学等を訪問し、関係者に対する聞き取り調査を行った。また、それらの成果は、日本比較教育学会第59回大会(6月、青木)および第13回国際日本語教育・日本研究シンポジウム(11月、鄭・平田)で口頭発表を、また『オセアニア教育研究』第29号で一部論稿として発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではこれまで、各国・地域における「合理的配慮」の定義と法整備・制度、さらには高等教育機関における支援の枠組み等、本研究の基盤となる情報・資料の整理検討の後、2022年度には、日本国内およびイギリスの大学における取り組みについて、現地調査を行った。昨年度は、先行研究をはじめとする文献研究を継続しつつ、オーストラリア(8月、青木)、韓国(9月、鄭・青木および別経費別用務との関連で2月、鄭・青木)、カナダ(別経費別用務との関連で3月、青木・鄭)でいずれも複数の大学を訪問し、関係者に聞き取り調査を行った。特に韓国では、合理的配慮に対する支援にあたっている教職員はもちろん、実際に支援を受けている留学生にも話を聞くことができ、大学・教員に求められる支援のあり方について振り返るきっかけを得ることができた。また、韓国およびカナダでは、関心を同じくする研究者との交流を密に持つことができ、今後の研究の方向性についての議論も行えた。 研究期間全体を通じて、対面もしくは対面とオンラインのハイブリッドで、またはメールでのやり取りを通じて、研究分担者・協力者(カナダ・ヒューロン大学・赤井佐和子氏)で進捗状況の確認・共有の機会を持つことに努めた。7月には、赤井氏の渡日に合わせて打ち合わせを持つとともに、研究代表者・分担者の所属大学の留学生カウンセラーおよびアクセシビリティ支援室教員と意見交換の機会を持った。 研究成果の公開については、6月に日本比較教育学会第59回大会(上智大学・オンライン、青木)、11月には第13回国際日本語教育・日本研究シンポジウム(香港、鄭・平田)で口頭発表を行った。また、『オセアニア教育研究』第29号(12月発行、青木)において、一部論稿も発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、これまでの研究で得られた情報をもとに、韓国、オーストラリア等の大学等で追加の資料・情報収集および聞き取り調査を行う予定である。また、今年度は最終年度にあたるため、特に成果の公開に努めたい。各自が所属する学会等における口頭発表および論文投稿はもちろんのこと、研究全体の総括として、研究代表者・分担者の所属機関が発行する紀要において、特集を組み論稿を発表することを予定している。 本研究は、各国・地域における合理的配慮を必要とする学生に対する授業実践上の支援の実態を明らかにすることにより、最終的に、授業参加者が互いの弱み・強みを補強し合えるような関係性の構築に資する教室内での工夫やしくみ、戦略を提示することを目的としてきた。しかし、研究を進めるなかで、大学における合理的配慮をテーマとする研究自体が少なく、特に授業実践・教室活動については、個人情報保護の観点からも非常にアクセス・公開が難しいという課題があることがわかった。そのため、本研究では、基盤となる基礎的な情報の収集・整理と課題の抽出、またそれらの公開・共有に努めてきた。本研究を土台として、今後は、本研究のなかでも頻繁に話題とされた、教室活動における評価に焦点を当て、より具体的に公正な参加と支援のあり方を考えていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究開始から2年間は、新型コロナウイルス感染症拡大およびその予防のため、国内外における現地調査ができなかったため。
|