研究課題/領域番号 |
20K02935
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
太田 浩 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化機構, 教授 (70345461)
|
研究分担者 |
伊多波 良雄 同志社大学, 経済学部, 教授 (60151453)
山崎 その 京都外国語大学, 付属図書館, 事務長 (70449502)
渡部 由紀 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (60600111)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 大学国際化 / 大学マネジメント / 大学評価 / 階層化意思決定法 (AHP) / 高等教育 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルスの感染拡大が続いたことにより、物理的な国際移動を伴う大学国際化の活動(特に国際教育交流)の休止は継続した。その影響で、情報通信技術を活用した大学国際化の推進が世界的に広がっており、この新しい動向について大学運営及び国際化のマネジメントという観点から事例収集・調査と文献調査を行った。研究代表者の太田は、ポストコロナにおける日本の高等教育の国際化と国際教育交流の展望について、世界的な動向を踏まえて考察した論文を発表した。研究分担者の渡部も所属大学におけるオンライン留学参加者への調査を通じて、ポストコロナ期におけるオンライン留学の役割と可能性を考察した論文を発表した。また、太田と渡部は大学国際化を自己評価し、かつ他大学と比較可能とする指標システムのプロトタイプを提案する論文を執筆し、国際学会誌に掲載された。 太田は、パンデミック下及びポストコロナを見据えた大学国際化について学会や研究会で精力的に発表・講演を行った。それらの機会においては、物理的な国際移動に過度に依存しない新たな大学国際化とそのマネジメント(特に経営と評価)の視点を重視した。渡部は東北の地域社会における外国人マイノリティ理解教育カリキュラムの開発や韓国・台湾の地方大学の国際化と地方創生に関する政策分析といった本研究課題の研究に寄与する調査を進めた。山﨑は大学の自律性に関する指標を検討する論文を、伊多波は新型コロナウイルスの社会的コストと行動変容に関する論文を発表した。これらは本研究課題への取り組みを進化させるものである。 太田と渡部は、昨年度に続き、大学国際化の評価指標に関するワークショップを実施し、大学の教職員と国際化のマネジメントに関する議論を通して幅広い意見交換や情報収集を行った。 全体として、新たな大学国際化の動向を整理しつつ、その変化が国際化のマネジメントに及ぼす影響を把握することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、大学における国際化の実態、課題、障害を把握するために国際化に積極的に取り組む日本国内の大学に対して、オンラインによる質問票調査を実施する予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスのパンデミックが継続していたことで大学の国際関係部署はどこもその対応に追われており、調査に回答する余裕がないことが明らかになったため、質問票の中身について継続的に検討することはできたが、実際の調査を行うことを断念した。 一方、大学国際化に関する文献調査やコロナ禍に対応した情報通信技術を活用した国際化、国際教育交流については、事例収集や聞き取り調査を十分に行うことができた。この新しい国際化への取り組みについて、国立大学と私立大学における好事例を調査し、ケーススタディとして大学マネジメントの視点を組み込んだ質的分析を行った原稿を代表者の太田は執筆した。これはアメリカで刊行される図書に掲載されることが決まった。 文献調査からは、パンデミックの影響で国際化の方針や戦略を見直したり、情報通信技術(ICT)を活用した国際化や国際教育交流に取り組んだりすることで、国際化のマネジメントにも大きな影響を与えている状況を把握することができた。具体的には、ICTの活用により、海外留学や研修に参加できないような学生も国際教育に取り込むといった包摂的国際化(すべての学生を対象に国際教育を行う)や大学間のオンライン協働教育などが急速に普及しており、「内なる国際化」の促進にもつながっている。また、ICTによる教育実践は、コスト削減、費用対効果の向上、リソースの再分配を促し、より効率的かつ効果的な国際化と国際教育が、大学経営・評価という点からも志向されていることがわかった。コロナ禍で大学の国際化について大きな変化が起こっており、そのマネジメント手法開発をテーマとする本研究においては有益な情報と知見を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、まず文献・資料調査、事例調査で得られたデータを分析したうえで、新型コロナウイルス・パンデミックの影響で起きている大学国際化のマネジメントに関する変化と新しい動向を整理する。そのうえで大学における国際化の実態、課題、障害を把握するために国際化に取り組む日本国内の大学に対して、オンラインによる質問票調査を実施する。その際、調査で使う質問票のドラフトは、上記文献・資料調査で得たデータの分析結果を反映させるため、再度全体的に見直したうえで完成させる。2022年度の後半には質問票調査で得られたデータの統計分析と大学国際化マネジメント手法開発のための試行用テンプレート作成を行う。なお、コロナ禍の影響における大学国際化の変化については、大学経営と評価の視点から引き続き文献・資料収集(事例収集を含む)を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、大学における国際化の実態、課題、障害を把握するために国際化に取り組む日本国内の大学に対して、オンラインによる質問票調査を実施する予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスのパンデミックが継続していたことから大学の国際関係部署はどこもその対応に追われており、調査に回答する余裕がないことが分かったため、当該調査の実施を延期した。よって、当該質問票調査に関わる経費(調査に関する会議に伴う経費、旅費、質問票作成にかかわる経費、調査にかかわる文献・資料購入費、調査実施に伴う業者への委託費など)を執行しなかった。学会や研究会がオンラインで実施されたため旅費も執行しなかった。2022年度に当該質問票調査を実施する際に、未執行(繰り越し)分の研究費を使用する予定である。
|