本研究は、ユニバーサル化時代の象徴ともいえる入試難易度の低い大学、特に「ボーダーフリー大学」における学士課程教育の質保証のあり方というテーマに、「大学」の主要な社会的機能である「研究」に焦点を当てることでアプローチするものである。すなわち、これまでの研究では十分に検討の及ばなかった、「ボーダーフリー大学における「研究」は教育の質保証にどのような影響を与えるのか」という問いこそが、本研究課題の核心をなす学術的「問い」である。具体的には、ボーダーフリー大学において「研究」がどのように捉えられており、それが教育の質保証にどのような影響を与えるのかを、組織、教員、学生という3つの視角から多角的に明らかにする。 令和5年度に中心的に取り組んだのは、組織の視角からの検討と学生の視角からの検討のまとめである。このうち特に後者については、昨年度実施したインタビュー調査で得られた知見を検証すべく実施した、BF大学生を主対象としたアンケート調査において以下の知見を得た。第一に、BF大学生の中には、「研究」を「学術研究」のような意味合いで捉えることのできない者が、学習面での問題の有無(程度)にかかわらず多く、比較的優秀な者でも半数程度を占めていることが確認された。第二に、BF大学生の中には、当該大学の教員に「学術研究」がむしろ必要だと考える者が、学習面での問題の有無(程度)にかかわらず多く、問題を抱えている者でも3分の2程度を占めていることが確認された。第三に、学習面での問題の有無(程度)にかかわらず、当該大学の教員に「学術研究」が必要だと考えるのは総じて、自分の学びにとってプラスに働くと認識しているからであるが、それは「学術研究」によって専門性が担保されるかどうかはさておき、理解しやすさが担保されるのを期待するからであることが指摘された。
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