フランスでは、長い職業教育の歴史のなかで、教育機関での理論的教育と企業での職場実践を組み合わせた「フランス型デュアルシステム」(formation en alternance:アルテルナンス教育)が発達してきた。同制度は、もともと中等教育レベルの若年者を育成するものとして発展してきたが、1987年の制度改定を契機に、高等教育の学生がこの制度を活用する動きが活発化し、現在では高等教育の学生が多く利用している。しかしながら、こうした現状にもかかわらず、高等教育における同制度の実態究明はこれまでなされてこなかった。 そこで、本研究では、前採択課題の研究成果も踏まえ、同制度の学校種ごとの「多様性」に着目し、学校種ごとの歴史的変遷、実態、教育効果、課題を検証してきた。 今年度はこれまでの研究経過をふりかえるとともに、改めて研究結果の妥当性を確認し、次の結論に至った。 第一に、同教育制度のメインである見習(みならい)契約制度(Contrat d’apprentissage)は、これまで中等教育レベルの契約者が多数を占めていたが、2020年には高等教育レベルの契約者が過半数を占めるにまでなり、近年、高等教育でのアルテルナンス教育の発展が著しいことが明らかとなった。第二に、こうした新たな潮流の一因として考えられる2018年の法改正については、①全体にとって利用しやすいよう工夫がなされ、②個別の事情に応じて、柔軟な契約の実施ができるよう意図されおり、③国外での実施をより行いやすいよう配慮され、④見習生に対する経済面での待遇が改善され、⑤受け入れ側の企業に対する助成制度を改革していることが明らかとなった。以上のことより、法改正が、とりわけ、若年者の事情に配慮し、従前の見習契約における制度上の硬直性を緩和していることがうかがえた。
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