研究課題/領域番号 |
20K02954
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
長田 尚子 立命館大学, 共通教育推進機構, 准教授 (90552711)
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研究分担者 |
中川 洋子 立命館大学, 共通教育推進機構, 教授 (70290608)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | キャリア教育 / カリキュラム・マネジメント / キャリア教育科目体系 |
研究実績の概要 |
本研究では、体系化されたキャリア教育科目をカリキュラムとして捉え、カリキュラム・マネジメントの観点から複数大学の事例を比較検討することを通じ、質保証に資する参照モデルの開発を目指している。研究課題に効果的にアプローチするために、1)カリキュラム・マネジメントの構成要素の検討、2) 構成要素の特徴および構成要素間の関係の検討、3)事例への適用性の検討、4)カリキュラム・マネジメントモデルの一般化の検討、の4つの実施項目を設定した。2020年度は、実施項目1)と2)に関して検討を進め、次に示す2つの成果を得た。 第一に、準備研究で検討したカリキュラム・マネジメントの仮説的モデルの見直しを行った。仮説的モデルは研究代表者の専門である教育学の観点をベースに検討していたが、今回の研究分担者からの指摘で、組織マネジメント的な観点を踏まえた考察の必要性が確認された。モデルを洗練させるために、異なる特徴を持つ2つの国立大学の実践者やキャリア教育の研究者との意見交換を行い、モデル内の構成要素の特徴や構成要素間の関係性に関する考察を深めた。これらの検討は、第27回大学教育研究フォーラムの参加者企画セッションとして、関連研究者との事例共有や意見交換の機会を持った。 第二に、キャリア教育科目の授業的特徴の検討を行った。従来のカリキュラム・マネジメントは学問や教科として確立された科目に関する教育課程を対象としたものであるが、キャリア教育は実社会を投影した環境の中での学生による主体的な活動が核となる。そのため、カリキュラムで提供している環境が実社会をどのように投影し、具現化すべきかという観点が質保証にとって必要になる。2020年度はそのひとつの事例としてプロジェクト・マネジメントの考え方を評価に応用する可能性について検討し、日本教育工学会の研究会において報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に示したように、実施項目1)と実施項目2)に関する検討を進め、成果を得ることができた。当初の計画では、2020年度は実施項目1)を中心に、シラバス公開情報をもとに検討対象の複数事例を候補として挙げ、その大学を訪問してインタビュー調査を行う予定であった。コロナ禍により実際の出張が難しい状況となったが、対象大学を絞り込んでZoomを用いた意見交換や第27回大学教育研究フォーラムでの議論を通じた検討を行うことができた。さらに、実施項目2)については、2021年度から開始の予定であったが、前倒しで着手できた。当初の予定をコロナ禍の状況を見ながら調整しつつ進めることとなったが、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の検討を通じて、キャリア教育科目は従来のカリキュラム・マネジメントのモデルが対象としているカリキュラムや科目にはない、新しい特徴を有していることが明らかになってきた。さらに、組織マネジメント的な観点からも、従来の学部組織に枠に収まらない新規性を有していることも見えてきている。当初は公開シラバスから対象事例を絞り込む予定であったが、以下に示す手順で進めることで、より効果的なモデルの精緻化が可能になると考えられる。手順としては、1)従来科目に対するキャリア教育科目の特徴を、カリキュラムの観点、マネジメントの観点からそれぞれ明らかにする。2)キャリア教育科目体系について、実施組織や体制、内容的な特徴からの類型化を行う。3)認識された各類型について必要に応じて詳細な調査を行い、類型を網羅することで、カリキュラム・マネジメントの仮説的モデルの精緻化を行う。 2021年度の検討内容に関しても、研究分担者の協力を得て、カリキュラムの観点に加えて、マネジメントの観点からの考察を統合化しする。、また、日本カリキュラム学会等での発表を行い、カリキュラム研究者との意見交換を通じて、研究の方向性を定めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、キャリア教育科目の体系を有している大学を選定し、訪問調査とインタビューを行うことを予定していた。コロナ禍の状況を踏まえつつ、結果的に対象を絞り込みZoomを通じた議論を行うことができたが、当初予定していた出張関係の経費分に関しては、未使用となった。2021年度も実際の出張は難しい可能性があるが、Zoomで調査や意見交換の場を設定し、その機会に専門家を招聘してコメントをもらうなど、出張に変わる機会を実現するために謝金としての使用を予定する。出張に関わる部分以外については、学会発表を行い、順次論文化していくために、当初の予定どおり使用を進める。
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