研究課題/領域番号 |
20K02955
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
秦 敬治 岡山理科大学, 教育推進機構, 教授 (50444732)
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研究分担者 |
山崎 その 京都外国語大学, 付属図書館, 事務長 (70449502)
各務 正 梅光学院大学, 高等教育開発研究所, 客員教授 (00398661)
篠田 雅人 社会情報大学院大学, 先端教育研究所, 専任講師 (60601234)
山咲 博昭 広島市立大学, 企画室, 特任助教 (20843361)
原 裕美 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 特定研究員 (20845052)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 私立大学 / 自律的な経営行動 / 大学事務組織 / 組織特性 / 評価指標 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、米国の事例から示唆を得つつ、日本の私立大学を対象に量的・質的調査を実施し、組織の意思決定と執行に高く貢献している事務組織にはどのような特性があるのかを明らかにすることである。 1年目の2020年度の目標は、「自律的な経営行動に高く貢献する大学組織」の定義を暫定的に行った上で、次年度に行う調査の基盤を構築することであった。そこで、まず研究メンバーそれぞれが大学経営論や組織論など様々な視点で、国内外から自律的な経営行動に関する文献及び大学における「自律性」に関する文献を集め、整理をした。その結果、「自律性」は対象や文脈によって意味するところが異なるという多義性があることが明らかになった。とりわけ「学問の自由(academic freedomと同義とする)」や「アカウンタビリティ(accountabilityと同義とする)」、「大学の自治」といった概念と大学の「自律性」との関係は、本研究のテーマと密接に関わるため今後さらに考察を深める必要があるという課題が明らかになった。 また、次年度実施する2種類の調査について、大学の“autonomy”を論じた文献で多く引用されているBerdahl(1971)や欧州大学協会の「EUA Autonomy Scorecard」及び日本国内の先行研究から、組織、財政、職員、学問の4つのカテゴリーを基本にした枠組みを構想することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究計画は、①大学が公開している情報の収集、②大学経営に関する文献調査、とくに米国の大学の事例研究、③「自律的な経営行動に高く貢献する大学組織」の暫定的な定義の検討の3点であった。 公開情報の収集については、収集する情報の特定及び収集方法等について研究会で検討中である。文献調査については、大学における「自律性」をテーマとした欧米及び日本の先行研究を収集し整理できた。そして、暫定的ではあるが本研究における「自律性」の定義を決めることができた。 これらの研究活動によって「自律性」の多義性など興味深い結果が得られ、次年度の調査活動の基盤を固めることができたため、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は、当初計画どおり大学の自律的な経営行動に高く貢献する大学事務組織に共通する組織特性を明らかにするための2種類の調査を実施する。2021年度は国内の複数の私立大学に対する質問紙調査と質問紙調査を補完するためのインタビュー調査を中心とした活動を行う。ただし、インタビュー調査については、新型コロナウイルス感染症の状況によっては、訪問調査ではなくオンラインによるインタビューなど、実施方法を変更する。 調査後は、本研究のメンバーに研究協力者や大学以外の組織研究者などを加えた研究会を複数回開催し、分析結果についてディスカッションを行う。多様な視点から議論することによって考察を深め、「大学の自律的な経営行動に高く貢献する大学事務組織に共通する組織特性は何か」を明らかにする。 これらの結果を踏まえて、2021年度には「自律的な経営行動に高く貢献する大学事務組織」の定義を再決定し、本研究の成果物の一つである「組織診断シート」(仮称)の開発に着手する。最終年度には、複数の協力大学における試行的導入を行い、その有用性を検証し、実用化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、研究会や各種学会がオンライン開催となり、当初予算の大部分を占めていた「国内旅費」・「その他」の執行がなくなったこと、また、各研究者の所属大学における活動制限の余波もあり、物品費の執行も最小限になったことが主な理由である。
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