研究課題/領域番号 |
20K02957
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研究機関 | 沖縄大学 |
研究代表者 |
岩垣 真人 沖縄大学, 経法商学部, 准教授 (90802851)
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研究分担者 |
楠山 研 武庫川女子大学, 教育学部, 准教授 (20452328)
牧野 邦昭 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (20582472)
松山 直樹 兵庫県立大学, 国際商経学部, 准教授 (80583161)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高等教育 / 大学史 / 経済学史 / 法学史 / 新制大学 / 高等商業学校 / 沖縄 |
研究実績の概要 |
本研究の二年目となる令和3年度は,前年度同様,新型コロナウィルス禍の影響を受けつつも,前年に獲得した知見をベースに,各分担者それぞれが研究を前に進めることができたと評しうるだろう.令和3年度の研究においては,定性的なアプローチをその中心としつつも,合わせて部分的に,手法としてテキストマイニングを活用した,定量的な実践を行うことができており,定量的アプローチをベースに検討を進める,令和4年度における検討への足がかりができたといえる. とりわけ,県立神戸高等商業学校の分析において,定量的なアプローチに着手することができた.令和3年度には,県立神戸高等商業学校の蔵書を対象として,そのタイトルの名詞・サ変動詞・地名等を抽出し,テキストマイニングによる分析を行うことができた.具体的な手法として,クラスター分析とクロス集計を行うことで,類似データの定点分析を行いつつ,データの構造についての時系列分析を進めた.そこで明らかにされた,県立神戸高等商業学校の蔵書の特徴は,まさしく県立神戸高等商業学校自体の特徴をも表すものであり,定性的分析を加えつつ,得た知見について,令和4年度には公表することを意図している.また,個々で用いた手法を,慶應義塾大学や琉球大学も対象として広げることにより,引き続き,定性的分析を補完するリサーチを拡大していきたい. 定性的な分析として,令和3年度には,琉球大学における法学実践の具体的分析を進めるとともに,県立神戸高等商業学校について,伊藤眞雄初代校長を軸とした検討をまとめ,公表にいたることができた.前者については,具体的な実践として,労働法学者である幸地成憲に着目し,その研究が同時代の「日本」におけるものと異なることが確認できた.また,後者については,「宜しくスマートたるべし」という教育理念が,どのように展開されていったのか,論文として公開に至っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度と同様,新型コロナウィルス禍の影響により,研究スタート時に想定していた形通りには,研究を実施することはできなかった.インタビュー調査や,図書館等の資料収集,海外でのリサーチなどについては,一定程度,制限があった.また,令和3年度においても,対面での研究会等を実施することはできなかった. しかしながら,感染状況が改善された時期を中心に,そしてまた,全体的な傾向として,国の新型コロナ感染症対策指針の変化に伴って公的施設の利用制限等が緩和されて行く中で,必要とする資料等へのアクセス状況も大幅に改善され,資料をベースとしたリサーチを継続・発展させていくことができた.本年度は,インタビュー調査等においても,新型コロナウィルス感染症に対するワクチン接種が全国的な広がりをみせたため,オンラインでの開催に限定される必要はなくなり,感染防止に十分配慮をした上でという条件がつくため,時間が限定されてしまうことはあるものの,対面で直接実施することが可能となった.必要となる資料へのアクセスと,インタビュー等の積み重ねをベースに,とりわけ令和3年度は,県立神戸高等商業学校における研究・教育実践のあり方と,草創期琉球大学における法研究の特殊性について,分析を深化させていくことができたと評することができるため,全体として研究は「おおむね順調に進展している」と判断できよう. なお,令和3年度においても,対面での研究会等を代替するため,オンライン会議システムを利用して,研究会を実施した.インターネットシステムの状況によっては,接続が不安定になるなど,部分的な障害も生じたが,研究会全体としては,対面でのものとほぼ同程度の密度をもって実施することができたと評価できる.このことも,上記の「概ね順調に進展している」という判断を支える理由の一つである.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の研究については,まず,「ウィズ・コロナ」への転換に伴い,各さまざまな制約の緩和に対応して,令和2年・3年には実施できなかった方法による研究を遂行したい.まずもって,対面での研究会を実施し,インターネット環境等による制限を受けず,幅広い意見交換を行いたいと思う.また,資料収集やインタビュー調査などについても,制限により従来は実施することができなかった施設・インタビュイー等を中心に,進めていきたいと思う.特に,インタビュー調査については,令和3年度にも実施することができたが,時間や回数などの点で,より重点的に実施する余地がある.令和2年度・3年度の課題をベースに,一層の研究の進展を図っていきたい. 内容の点からは,定量的アプローチを採用し,従来までの研究内容を深化させることが課題となる.令和3年度においても,既に県立神戸高等商業学校の蔵書分析などに際し,テキストマイニングの手法を採用することによって,分析の客観化を図ってきた.これを,他の対象に関しても広げ,従来の定性的アプローチの内容によるものを補完する研究を進めていく.具体的には,まず,「後発的高等教育機関」とされる諸学校において,発表された論文・著作と講義概要等が対象として想定される.例えば,一定期間に発表された,『三田学会雑誌』や『琉大法学』などに掲載された論攷のタイトルをデータの母体とし,それを対象としたワードクラウド作成することで,語とそこで表現される重要概念を可視化したり,マッピングを作成することで,語(文字列)と語(文字列)間の共起ネットワークの可視化を試みたりするなど,定量的かつ客観化されたアウトプットを志向したいと考えている. ただ,もちろん,定量的アプローチはそれ単体で完結するものはなく,定性的な検証が欠かせない.定性的な再検討を総括として行い,令和5年度の研究への接続を図りたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス禍の影響により,対面での研究会や,一部,インタビューや資料調査を遂行することができなかった.今後,「ウィズ・コロナ」への国の姿勢転換とそれに伴う諸規制の漢和に併せ,従来実施を断念してきた,調査等を遂行し,そのために次年度使用額を利用しようと考えている. 具体的には,十分な回数,対面での研究会を実施(そのための旅費と会場利用費を,今後計上することを想定)し,また,国立公文書館での資料収集(そのための旅費と,複写費等を計上することを想定)している.さらに,さらなる国の方向転換等を勘案しつつではあるが,当初の予定通り,海外での資料調査についても,実施することを予定している(そのための旅費,複写費等を計上することを想定).
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