研究課題/領域番号 |
20K02959
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研究機関 | 独立行政法人大学入試センター |
研究代表者 |
山村 滋 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 教授 (30212294)
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研究分担者 |
佐藤 智美 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 教授 (80240076)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高等教育進学支援 / 教育の機会均等 / アウトリーチプログラム / 社会経済的弱者 / 英国 |
研究実績の概要 |
高等教育機会の格差是正は多くの国々で重要な政策課題のひとつである。わが国では高等教育無償化などの経済的援助措置により、高等教育機会が低所得層にもより開かれることを政府は期待している。しかし高等教育機会の実質的な格差是正には、経済的援助だけでは不十分で、低所得層に対する学力保障や進学意欲向上のための様々な手立てが不可欠である。 英国では、高等教育の機会に恵まれてこなかった低所得層を対象とした格差是正のための多様な取り組みが大学等により行われている。本研究は、限られた財源下で低所得層を対象とした高等教育進学支援や高等教育の機会均等を実現する現実的な方途を、英国の事例の意義・限界・課題を分析することを通して追究し日本社会と高等教育機関への示唆を得ることを目的とする。 本年度は以下のような分析を行った。 ①政策文書および先行研究の分析:英国では、大学に授業料を上乗せする自由を与える代わりに、「アクセス協定」を策定し、低所得層出身の学生への財政的援助と新たなアウトリーチプログラムに資金を支出させる政策が打ち出された。これにより、政府は財政的には負担をせずに、高等教育全体の機会が拡大することが期待された。しかし、自らの大学の利益のために「高等教育拡大政策」が利用されている問題が起きている。これは根本的には高等教育機関を競わせるという市場化政策に問題があると考えられる。 ②社会的弱者の大学進学機会の分析:HESAにより公表されている「POLAR4データ(地域ごとの高等教育進学者の割合データ)」(2018-19年度)を分析した。その結果、進学者の割合(5段階)のうち、もっとも割合が低い地域からの進学者は、「大学」に限定すると階層的な大学構造下で伝統的・権威のある大学ほど、低進学率地域からの進学者は少ないという格差構造があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れの理由は、コロナ禍で予定していた訪問調査を断念せざるを得なかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
欧州および日本でワクチン接種が進み、2021年度の終わり頃には、訪問調査が可能になるのではないかとの期待がある。しかし、2021年度も訪問調査が実施できないことも想定し、英国で実施されたアウトリーチプログラムの調査研究を渉猟し、そこから成果や課題等を抽出することも考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で英国への訪問調査が実施できなかったため旅費として予定した分が次年度使用額となった。この額は、次年度以降の調査研究分実施費用に充てる。
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