研究課題/領域番号 |
20K02960
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
光本 滋 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (10333585)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大学改革 / 技術職員 / 教育要求 / 学生参加 |
研究実績の概要 |
本研究は、今日の高等教育の状況とのかかわりを視野に入れ「1968年」後の大学改革を位置づけ直そうとするものである。2021年度は、以下の研究実績を上げた。 (1)「1968年」後の大学改革の中で展開した大学の技術職員の専門職化に関する議論の経緯を再評価し、課題を抽出した。この議論は文部省・人事院も含めて大規模に行われ、新官職の創設も検討されたものの、最終的には、1998年の訓令による技術専門官、技術専門職員の創設に伴う級別定数の配分方式の変更に帰結したことが知られるが、専門職性の開発と人事制度の改革の方向は関係者により今日も探究されている。 1990年代末の決着が示したものは、国家公務員制度に由来する限界、および教育・研究を支援する職員全体の処遇改善とキャリアパスの問題を視野に入れた国立大学の人事制度の変革の必要であった。問題の指摘にとどまらず、職員の処遇改善とキャリアパスの構築という内在的な要求の実現を原動力としつつ、技術職員の確保という大学の必要にも応えるものとして国立大学全体の課題として改革の方向が追求されたことは特筆される。同時に、他の職種・分野との連携、波及にいくつかの問題を抱えていたこと、それらを解決するためには大学の組織問題にとりくまなければならないことを示唆している。 (2)2021年度においても、COVID-19パンデミックは以上に関して困難をもたすものであった。各地の大学を訪問することはまったくできなかった。また計画していた、関係者の座談会の開催も断念せざるを得なかった。 (3)2020年以降あらためて明らかになった学生の運動が学生自身の教育要求の明確化に寄与するものであること、学生団体の交渉権の有無が大学の組織運営を適切におこなっていく上で重要であること等について検討し、その成果を発表した(雑誌論文、図書)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度、技術職員の専門職化に関する議論の検討を通じて、これまで大学改革に関する研究において参照されることのなかった分野の資料に接し、多くの示唆を得ることができた。本研究の課題である、大学団体等の高等教育論の水準(どの面を集約していたか、政策・体制(制度)・実践の課題を明らかにできていたかなど)の検証、および課題化(設置基準の改革、「自己点検・評価」など)の妥当性を検討する作業に寄与することは間違いない。 しかしながら、各大学の改革の内容を分類整理し、実施され継続したもの、実施されたものの途絶したもの、構想のみにとどまったものを明らかにする等の作業は進んでいない。このため、研究全体の進捗状況は「やや遅れている」と判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
(1)技術職員の専門職化は高等継続教育との関連が強い。この問題に関する論点、動向が他の職種や大学教育全般の動向とどのように結びつくか、ひきつづき解明していきたい。 2021年度検討した先行研究からは、一部の大学において見られる標準職務表の独立をどのように評価すべきかとの重要な課題が浮かび上がった。この点を明らかにするために、民間企業を含めた標準職務表の改革の動向を検討したい。また、標準職務表や技術職員の組織・人事制度に特徴がある大学の現状、および1970年代以降の改革との関連に関する調査を行う。 研究を推進するために、大学職員論に関する研究会を開催する。そのために、大学の組織・職員に関する政策に関する研究を進めている菊池芳明(横浜市立大学)、深野政之(大阪公立大学)との共同研究の機会を活用する。 (2)研究支援者を雇用し、これまで収集した資料の整理を行う。関連分野の資料整理の実績を持つ大学院生らの協力を得られる見通しである。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19パンデミックの影響により、資料調査を行うことができなかった。このことにより、予定していた出張費の支出がなかった。 COVID-19パンデミックの影響により、研究補助者の確保ができなかった。このことにより、予定していた謝金の支出がなかった。 2022年度使用計画:①大学における福利厚生施設の管理に関する資料収集(東京、京都)、②大学の組織運営と大学改革の関連に関する研究会の開催(9月、京都)、③資料整理のための研究補助者の確保(1000円×200時間)。
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