本研究は、教育研究に係る情報利用・倫理審査・同意取得という3つの具体的な場面から、高等教育研究とIRの成果が十全に発信されるための仕組みとして求められる指針についてアプローチするものである。 最終年度である2022年度は、令和2年法律第44号及び令和3年法律第37号による個人情報保護改正及びそれに伴い関連する議論が活発化している状況を踏まえ、個別機関や関連学会の対応、その変化と適応を含めた動態や特徴、較差について分析を進めるとともに、海外の動向を含め、知見のブラッシュアップを実施した。 本研究全体を通しての知見として、第1にリスクの最小化や弱者性(vulnerability)の観点から、所属学生に関わるデータを利用するIRにしても高等教育研究においても、プロトコルの重要性が指摘される。それに関連して、第2に、IRや高等教育研究を担うことの多い本部所属・センター所属教員の周辺性と教教分離による混乱が指摘される。この点については研究データ管理及び研究の再現性担保とも関連するため、今後の基盤整備が期待される。第3に、負担の大きさや専門性の高さ、それに伴う人材確保の困難性の観点から、倫理審査を効率化させる枠組みの必要性が指摘される。医療系を中心にRECS(reseach ethics consultation service)やCentral IRBs、SMART IRBなどの取り組みも確認されるが、機関横断・分野横断的な研究が拡大する中で、カナダのPanel on Research Ethicsなどの機関間・分野間を横断する取組や研究支援の共通基盤の充実が期待される。
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