研究課題/領域番号 |
20K02967
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石川 真由美 大阪大学, グローバルイニシアティブセンター, 教授 (90379230)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 大学国際化 / ブランチ・キャンパス / マレーシア / 複合社会 / マルチ・カルチュラリズム |
研究実績の概要 |
本研究はアジアの国際大学における臨地調査から、既成概念を超える多様なアジア発の大学国際化モデルを明らかにし、従来「英語化」あるいは「欧米化」と理解されてきた大学の「国際化」を再考することを目的とする。 初年度に予定していた臨地調査を新型コロナのため行うことができなかったが、調査の対象であるマレーシアの国際大学3校および本校(メインキャンパス)2校について、文献資料やウェブ上のデータの収集と整理を行い、大学毎にファクツ・シートおよび研究の全体像を俯瞰するデータベースを作成した。また、広くアジアやイスラム圏における大学国際化に関わる研究の文献調査を継続し、現地紙やインターネット・ニュースを含む最新のメディア報道についても相当数の資料を集めることができた。このように、次年度以降に予定する聞き取り調査の周到な準備をすることができた。 より具体的には、(1)中国の著名な研究大学初の海外分校である厦門大学マレーシア校(XMUM、設置2016年)、(2)南インド・カルナタカ州を本拠とする私立大学マニパル大学の海外分校であるマニパル・ユニバーシティ・カレッジ・マレーシア(MUCM)(1997年にマラッカ・マニパル医科大学MMMCとして設置。2021年1月に改名)、(3)イスラム協力機構(OIC)の支援を受けてマレーシア政府が設立した国際イスラム大学マレーシア(IIUM) (設置1983年)について、ミッション、開学の背景と理念、学生数・教員数や専攻など大学の基本情報、留学生・外国人研究者等の国際化データ、現地における支援母体やステークホルダー等の現地社会での位置づけに関する資料を収集し、整理した。さらに、(1)(2)の本校である中国の厦門大学(XMU)、インドの私立大学総合大学マニパル大学(MAHE)についての同様のデータ収集とファクツ・シートの作成等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は人類学的な臨地調査を手法とする大学国際化についての研究であり、まずは現地訪問により良好な人的関係を築き、現地の関係者からの信頼を得ることが、研究の質を高め、成果を上げるために極めて重要である。そのためオンライン等の遠隔による代替調査が難しく、本格的な臨地調査については来年度以降、新型コロナの収束を待って実施する必要がある。しかしながら、上記のように広範な文献資料収集と整理を行い、特に5大学(IIUM, XMUM, MUCM, XMU and MAHE)のデータベースを作成できたことから、次年度以降の聞き取り調査の準備が順調に進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナの世界的な感染拡大は、大学国際化の根幹である「人のモビリティ」を突然停止させ、海外大学のブランチ・キャンパスを数多くホストするマレーシアにおいては、留学生の激減やそれに伴う大学の財政状況の悪化など、想定外の事態が起こっている。また、大学国際化を取り巻く状況の急変は、マレーシアのみならず世界の多くの大学に共通の課題を投げかけている。世界の大学の国際化の概念と実践がこのパンデミックを契機としていかに変容するか、何か残るのか、非常に興味深い研究課題である。
上記の問題意識に基づき、今後の研究については基本的に当初の計画通りに進める一方で、より大きなポストコロナの世界における学生と研究者のモビリティ、大学のモビリティ(とくにブランチ・キャンパスの将来)について、現地調査に行ける状況になるまでは世界の事例と情報を集め、本研究に生かすなど、臨地調査の準備をさらに続けていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は人類学的な臨地調査を手法とする大学国際化についての研究であり、オンライン等の遠隔調査には馴染まないため、来年度以降、新型コロナの収束を待って現地マレーシアにおける臨地調査を実行する計画である。
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