研究課題/領域番号 |
20K02971
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研究機関 | 筑紫女学園大学 |
研究代表者 |
山田 直子 筑紫女学園大学, 文学部, 准教授 (50421219)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高等教育の国際化 / 異文化間能力 / 教育の国際化 / 外国語教育 / 国際協働学習 / 国際的な学びの評価 |
研究実績の概要 |
2022年度はフィンランドの高等教育機関にて調査を実施するための予備調査と準備を行った。新型コロナ感染症の世界的流行により、本研究課題で予定していた海外調査を2年間見送らざるを得なかったが、人の移動制限が緩和されはじめたことから、調査の準備を本格的に開始した。 現地調査のための予備調査として、まずフィンランドに存在する全ての高等教育機関の大学HPを調査し、各大学が行っている教育の国際化の方針と取り組み内容に関連する情報を抽出する作業を行った。データは(1)大学が発表している国際化戦略や方針について述べられた文書、(2)学生モビリティに関連するもの、(3)Internationalization at Homeに関連する活動の3つについて収集した。抽出したデータを整理し、調査対象にしたい大学を2校選定した。一つは規模の比較的大きな研究大学で、もう一つは仕事に直結する知識や技術を養うために実践的な教育を展開する中規模の応用科学大学である。これらの大学関係者とEメールのやりとりを重ね、教育の国際化に携わる教職員へのインタビュー、教育の国際化に関連する取り組みと学生へのインパクトを分析するための調査、授業や活動への参与観察を行うことが可能となった。訪問が確定した後、質問票の作成、聞き取り項目の精査などを行い、調査に備えた。当初2月に渡航を予定していたが、先方の都合により、調査を2回延期することになり、最終的には5月に現地調査を実施した。 また、22年度は10月に2件の口頭発表を行った。1件は中国杭州の大学が主催した国際シンポジウムに参加し、グローバル化と大学の教育の国際化について、プログラム開発や国際教育に携わってきた当事者の立場から、現状と課題について報告した。もう1件は国内の学会において異なる学問分野(日本語教育)の研究者との共同研究の成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2つ理由がある。まず、本研究の開始年度より新型コロナ感染症の世界的流行がはじまり、ヨーロッパでの調査や国内での研究活動が十分に行えなかった。2つ目に、研究代表者は本研究課題開始年に新しい大学に着任したことや、また役職についたことによる校務過多で研究が滞ってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年5月にフィンランドの2つの大学で調査を実施したため、今年度は本調査で得られたデータを整理し、分析することが最も重要な活動となる。今後、2つの考察をを行う予定である。 一つは、マクロな視点での分析で、フィンランドの高等教育機関の国際化への取り組みに関して考察する。フィンランドの全大学のHPから収集したデータと現地での聞き取り調査の結果をもとに、大学の国際化戦略がどのように策定されているのか、その戦略や方針の内容はいかなるものか、掲げた目標を達成するためのアプローチやプログラムはいかなるものか、プログラム運営や教育を担当する教員の関与はいかなるものかについて考察する。調査を実施した大学では、コアとなる教員の「文化」に対する考え方が教育プログラムの策定に大きな影響を及ぼしていることが見えてきた。具体的には文化本質主義への批判が、教育方法やアプローチに直接影響しており、非常に興味深い。この点については、今後さらに考察を深めたいと考えている。 二つ目はミクロ分析で、実際の取り組みを手がかりに、教育の国際化と学生の異文化能力の涵養の関係性について考察を行う。「学生の国際流動性促進が、必ずしも大多数の学生の利益とならなかった」という反省から生まれたInternationalization at Homeの理念が、多くのフィンランドの大学で共有されていることが理解できた。IaHの取り組みとして実施されているタンデム学習について、現地学生のインタビューと質問紙調査の内容を分析し、学生の知識、スキル、態度の養成にどのようなインパクトをもたらしているのかるを精査したいと考えている。 これら2つの分析結果をまとめ、成果を国内または国際会議で発表し、論文執筆につなげる予定である。今年度は学内の役職から外れるため、研究のための時間を確保し、これまでの遅れを取り戻したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
20年に開始した本研究課題は、新型コロナ感染症の流行や校務負担が増えたことなどにより、3年間を通して計画していた内容の活動が困難であった。そのため助成金の執行も予定通りに進まなかった。また22年度については、2月、3月に実施を予定していたフィンランドでの調査が、5月に延期となったため、22年度の支出として計上することができなかった。使用計画としては、5月のフィンランド調査が無事終了し、6月以降は国内外の会議での発表を予定している。また英語による口頭発表や論文執筆に必要な英文の翻訳チェックなども利用するなど助成金の執行を予定している。
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