研究課題/領域番号 |
20K02972
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
西井 正造 横浜市立大学, 先端医科学研究センター, 助教 (90383497)
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研究分担者 |
武部 貴則 横浜市立大学, 先端医科学研究センター, 特別教授 (20612625)
飯塚 重善 横浜市立大学, 先端医科学研究センター, 客員准教授 (40551073)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カリキュラム / 学際教育 / 医療×デザイン / アクティブ・ラーニング |
研究実績の概要 |
これからの医療は、投薬や手術以外の患者の生活環境の中での実践を支えるための処方をも視野に入れる必要がある。我々は、従来型の医療・医学から等閑にされやすいこの領域を「Street Medical」と名付け、概念構築し、この新概念を支える人材の育成のためには超学際カリキュラムが必要となるという仮説を設けた。そこで近年、注目を集めているアクティブラーニングの手法を取り入れることで、効率的で汎用性のある教育が実施できるのではないかと考えている。研究代表者らが既に実践を開始している教育現場をフィールドにしながら、アクティブラーニングを基軸とした新時代の医療の担い手養成カリキュラムを開発し、その有効性を検証した。2021年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、引き続き完全オンラインでの教育を行った。昨年度よりオンラインに最適化するため、新しいアプリを導入するなどの調整を行った。本年度は、昨年度の完全オンラインのカリキュラムでの成功や受講希望の増加を踏まえ、受講者数を増やすことに成功した。スクールの受講生を公募、選考した結果、最終的に合格者数は33名、平均年齢は30歳(最年少者:16歳、最年長者61歳)、男女比は女性16名、男性8名の受講生となった。本年度のストリート・メディカル・スクールは、7月30日~12月末日、毎週金曜日19時~にて、講義+ワークショップ+調査+製作を基本構造とし、自らの学んだ成果を発表する場(Zoomでのライブ配信とウェブサイト上でのポスター発表)を設けることで、自らのアイデアを公共の場で発信することを目標としたカリキュラム編成にし、学習効果の向上を企図した。本領域で必須となる医療知識習得については、医師・看護師・コメディカル・医療機器・診断薬メーカー従事者などの多様なバックボーンを持つ受講生を適宜グループに配置することによって対処する方法を採用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、ストリート・メディカル・スクール第3期を立ち上げ、研究分担者である武部貴則によるStreet Medicalについてのイントロ講義を皮切りに、世界的に活躍するクリエイティブディレクター4名を講師陣に迎え、世界で活躍するクリエイターがどのようにアイデアを創出しているのかを学習する機会を設けた。また研究代表者が本学際領域の担い手に身に着けるべき知識項目を分析したうえで、医学部でも習う機会の少ない「医療とその周辺の世界の在り様」に関するミニ講義を行った。ここでは、世界の医療制度の違いからくる「医療」との付き合い方の国際的差異や、ストリート・メディカルの実装で視野に収める必要のある薬機法、健康増進法、景品表示法などの基本的考え方の学習を実施した。また2回のワークショップについては、これまで研究代表者が所属する組織に外部からアイデア出しの問い合わせがあった医療・健康未解決課題の中から、「都市化・人口集中」「Digital × Happy」「新型コロナウイルス感染症」をテーマとして設定した。昨年度では制作が最終発表の1回のみで、アウトプットの方法が身に付きにくかったため、本年度では中間制作を設け、最終発表の精度を高めた。ツールとしては、講義や対話にはZoomを、講義外ではビジネスチャットを活用、また、ワークショップでは新たに「Miro」というインタラクティブ・メモツールを採用した。昨年度に挙げられた「受講生同士の交流が不足している」課題については、自己紹介のタイミングで各自の趣味・嗜好を発表する「偏愛マップ」を導入することにより改善を図った。受講生アンケートを実施したところ、本教育カリキュラムのオンライン実施は、昨年よりも改善されたことが確認された一方で、ワークショップの方法について1回目の前半で躓いたという声があり、事前に入念な説明を求められていることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2021年度のスクール実施の分析検証(医療系受講生とデザイン系受講生との知識・経験の差や医療系講義の量・質の課題)を基に、(1)カリキュラムプロトタイプⅡ(2021年版)を改良し、30名強の受講生からなる第4期SMSを実施し、開発したアクティブラーニングカリキュラム(含、デザインされたケーススタディワークショップ、中間制作)の狙いの実現性について、受講生の授業での成果物ポートフォリオ、Slackなどのビジネスチャットでの授業外での受講生の発言、Miroでのリアルタイムインタラクションなどについて分析を実施しながら、どのような知識・技能・態度が修得されているのかを検証する。また、講義はオンラインによる実施を基本とするが、新型コロナウイルスの蔓延の状況を考慮しながら1、2回ほどオンサイトでの交流を想定する。 (2)その検証を踏まえて、医療系もしくは非医療系の受講生それぞれに固有の課題を抽出し、カリキュラムプロトタイプⅢを策定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、当初予定していた対面での教育実践ではなく、完全オンライン形式に変更したため、研究代表者や分担者、講師陣の旅費・交通費の使用がほぼなくなったため。更に、教育実践の成果発表会について会場を借りて、一般来場者100名以上の会を開催することを計画していたが、同様の理由により、フィジカルな会を取りやめ、Zoom上での配信とウェブサイトでのポスター発表に切り替えたため、その会場費・運営費やコメンテーターの人数の減員などが生じた。 令和4年度は、オンライン授業の進行をアシストするための人件費、受講生が制作したアイデアの試作、フィジカルとオンラインをハイブリットした発表会の開催も視野に入れ、費用を当てる予定である。
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