研究課題/領域番号 |
20K02980
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中川 洋子 立命館大学, 共通教育推進機構, 教授 (70290608)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | キャリア教育 / 専門性 / 専門職性 / 組織マネジメント / blended professional |
研究実績の概要 |
2023年度も「大学キャリア教育における組織モデル(いくつかの組織モデルへの収斂と個別最適な組織マネジメントの提案)」を検討するために、「実態調査の継続」「実態調査の分析と暫定的な組織モデルの構築」を行った。並行して、他領域の専門職との比較研究のためのアクションリサーチも開始した。 1)実態調査の継続実施:2023年度は、WEB公開情報をもとに整理・分類した「組織モデル」6類型のうち、未着手だった4類型について、大学の複数レイヤー(マネジメント層/キャリア教育担当層)を対象にヒアリング調査を実施した。本年度の調査より「①組織モデルの違いにより、マネジメント層内部の階層や権限が異なること、②マネジメント層もブレンド型(教員と職員との組織構造が混在)であること、③レイヤー間でキャリア教育担当者に求める専門性の認識に大きな差異があること」が新たに明らかになった。 2)分析と組織モデルの構築:ヒアリング調査を基に暫定的な組織モデル構築の検討を開始した。モデル構築の方法として、質的比較分析(QCA)を本研究に援用するために、組織研究分野(QCA)の先行研究レビューを行った。並行して、モデルの分岐要因(条件要因)探索のための追加調査を行った。 3)他領域の専門職との比較研究:2023年度より、新たに他領域の第三の職種との比較研究を開始した。具体的には、キャリア教育と関連深い第三の職種である「アカデミック・アドバイザー」の専門性に関する現状と課題を探索するために、アクションリサーチとして研修会などを試行的に実施した。 4)上記1)2)3)の調査・分析の結果、キャリア教育の「組織モデル」を規定する重要な要因として、「教育型大学教員」の「エフォート管理」という課題が抽出されたが、日本の大学教授研究では十分に議論が進んでいないことも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績に示したように、1)~4)に関する研究を進め一定の成果を得ることができた。特に、過年度より継続課題となっていた実態調査(大学訪問:大学キャリア教育の実践者/組織マネジメント担当者への半構造化ヒアリング調査)を概ね完了することができたため単年度としては大きな進捗があった。しかしながら、研究全体としては、まだコロナ禍による積み残しがあり「やや遅れている」という判断になる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度もこれまでの研究を基盤に、本研究の目的である「大学キャリア教育における組織モデル(いくつかの組織モデルへの収斂と個別最適な組織マネジメントの提案)」を検討する。特に、本年度は研究の総括として、実践可能な「個別最適化された組織マネジメント」提案のための「組織モデルの構築」「個別最適化モデルの分岐要因の特定」「実践への応用可能な事例調査」を行う。 1)組織モデルの構築:これまでのヒアリング調査を基に、質的比較分析(QCA)を本研究に援用し暫定的な組織モデルの構築を行う。 2)モデルの分岐要因の特定:モデルの分岐要因(条件要因)として導出された仮説(「キャリア教育担当者に求められる専門性」は、「エフォート(教育・研究・サービス)管理」を代理変数にして、測定可能ではないか)を検証するための文献調査を行う。 具体的には、①大学キャリア教育担当者の「教員公募」情報からエフォートを類推する記述を抽出・整理し、エフォート管理の現状と最適化のための要件を探索する。②「教育型大学教員」の先行事例が豊富なオーストラリアの高等教育研究を参考に、日本のキャリア教育組織に援用する際の課題の抽出を行う。 3)事例調査の実施:それぞれの組織モデルに適した実践可能な「個別最適な組織マネジメント」を検討するための事例調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
継続的な実態調査(大学訪問:大学キャリア教育の実践者/組織マネジメント担当者への半構造化ヒアリング調査)により、「組織モデル」精緻化のための調査は概ね完了することが出来たが、それぞれの組織モデルに適した実践可能な「個別最適な組織マネジメント」を提案するための事例調査は、まだ完了していないため、関連経費(旅費や人件費)の一部が未執行である。2024年度も、引き続き大学への訪問調査を進める予定である。
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