研究課題/領域番号 |
20K02989
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研究機関 | 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構 |
研究代表者 |
竹中 亨 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構, 研究開発部, 教授 (90163427)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 基盤交付金 / 算定式 / アウトプット指標 / 業績協定 / 大学法人化 |
研究実績の概要 |
ドイツおける大学への基盤交付金について、制度の全体像を調査研究した成果を「ドイツにおける大学基盤交付金制度――基礎経費・アウトプット指標・業績協定」『大学評価・学位研究』22として発表した。当論文では、ドイツの基盤交付金が、基礎的経費、アウトプット指標を用いた算定式、業績協定という3つの方式で算定されることを述べ、その具体的な内容を明らかにしたものである。とくに大学経営の戦略化という観点から、業績協定のもつ意義を強調した。 本研究の本来のテーマである、学内資金配分の制度と実態を明らかにするうえで、政府からの基盤交付金配分の制度を把握しておくことはきわめて重要である。というのも、ドイツでは両者は密接に連動しているためである。その意味で、当論文は本研究の基礎をなすものである。 さらに、財務を含め、法人化後の日本の国立大学の権限をドイツと対比して考察するため、「法人化というチャンス」大学改革支援・学位授与機構編著『大学が「知」のリーダーたるための成果重視マネジメント』ぎょうせい、2020年を発表した。日独はほぼ同時期に高等教育の規制緩和を経験するが、大学に委譲された権限は、日本ではドイツと比較してかなり限定的であることを明らかにした。 大学が自学の経営戦略に沿った学内資金配分を行うためには、大学自体に経営的力量が必要である。それを支えるのは、高度専門職化した大学職員である。ドイツにおける大学職員の専門職化に向けた人材育成の一端を明らかにしたのが、「ドイツにおける大学職員研修」大学改革支援に関する調査研究グループ編『大学改革支援に関する調査研究 2020年度報告書』大学改革支援・学位授与機構研究開発部、2021年である。これによって、人材面から学内資金配分というテーマに接近した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標である、大学内部の資金配分の制度と実態を解明するという目標に向けて、その前提となる、政府からの基盤交付金制度の解明を進めた。この作業は、概ね所期の目標を達成したと考えている。ドイツは州ごとに制度が異なるという特殊事情があり、細部では未詳の部分もあるが、まずは当該の課題は2020年度において果たされたと理解している。 これと並行して、ヨーロッパ他国における、財務を含めた大学の統治構造に関する文献調査を進めてきた。その結果、大学統治におけるドイツと他国との共通点と特異点を把握することが可能になった。たとえば、算定式や業績協定という財務上のツールを用いる点では、他国と共通する面があるが、ツールの実際的な適用ではドイツは比較的消極的だという点などは、その一例である。 また、日本の国立大学法人化との対比で、ドイツの事例の意義を浮彫にすることができた。わが国の高等教育の今後を議論するうえで、本研究は完了後、大きな役割を果たすものと考える。 学内の資金配分にかかる人的な前提という面にも目配りして、本研究のテーマに多角的に接近した。大学職員の高度専門職化について、ドイツの状況をおおよそ明らかにできたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度からは、学内の資金配分の制度について、個別の事例を素材にして解明を進める計画である。これに関しては、ドイツ側で公刊された報告書が若干あり、そこから若干の事例はすでに把握できている。そのため、効果的・効率的に事例研究を進めることができると予想している。 また、ドイツを含め、ヨーロッパの高等教育について,主として統治制度を軸に文献調査を引き続き進める予定である。この方面の研究は学界ではかなり蓄積があるので、文献調査によって必要な知見を獲得することに、大した困難はないと考えている。 今後の研究推進でもっとも危惧されるのは、新型コロナウイルス感染の拡大によって、計画しているドイツでの聴き取り調査が不可能になるかもしれない点である。すでに、2020年度で計画していたドイツ渡航は、この理由から見送らざるをえなかった。 事態の好転がない場合、先方の理解を得て、オンラインでの聴取で代替する可能性も検討している。ただ、初対面の相手とのオンライン聴取は、信頼感の醸成などの点で限界が多いので、現地での聴き取り調査を2022年度に延期して集中的に行うことも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で海外渡航が不可能になり、予定していたドイツでの聴き取り調査が実行できなくなった。そのため、ドイツへの渡航と滞在に計上していた旅費が未執行となり、結果的に次年度使用額が発生したものである。 2021年度は、新型コロナウィルス感染状況が許せば、2020年度に予定していたドイツでの聴き取り調査を年度後半に実行する計画である。次年度使用額は、そのための渡航と滞在の費用に充当する予定である。
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