研究課題/領域番号 |
20K03017
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小林 秀之 筑波大学, 人間系, 准教授 (90294496)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 視覚障害 / 合理的配慮 / 修学支援 / 大学 |
研究実績の概要 |
本研究は,視覚に障害のある学生の修学支援の内容(合理的配慮)を決定するプロセスと支援の実施に当たって,個々の学生の障害の状態や特性・ニーズを把握した上で決定する支援内容の効果を検証することを目的としている。 令和2年度は,新型コロナ感染症の対応として多くの大学でオンライン授業が導入され,所属大学においてもオンデマンド型オンライン講義が展開された。加えて,所属大学においては令和3年度に関しても新型コロナウイルス感染症の感染拡大が継続している状況等を踏まえオンライン授業の実施が求められた。この状況の中で,点字を常用する視覚障害学生への修学に関して,コロナ禍以前から用いられていた履修登録を行うオンラインシステム(TWINS)及び学習管理システム(manaba)については,特段の困難はなく使用することができた。一方,オンライン講義を行うMicrosoft TeamsやZoomの使用に関する課題の整理と対応を令和2年度から継続して検討し,受講に当たっての授業担当者への特別な配慮の依頼に関しては,従来の対面式の授業での依頼に加える内容は見いだせなかった。加えて,普段から音声によりパソコンを使用している点字を用いている学生にとっては,オンデマンド講義動画の再生速度を上げて受講しても支障がなく,対面式の授業よりも効率的であることが示された。一方,保有視覚を最大限に活用する弱視学生に関しては,講義資料が確実に電子データとしては配付されるためにオンライン授業による特段の困難を訴える者はみられず,授業担当者への対面式授業で依頼している配慮内容に再検討する必要もないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度についても令和2年度から引き続きオンデマンド型オンライン講義が実施され,オンライン授業に関する視覚に障害のある学生の修学上のニーズとそれに基づく配慮については,一定の知見を得ることができたが,通常の大学生の修学状況とは大きく異なっていた。授業場面での合理的配慮の提供は,障害のある学生が配慮依頼文書の提出と合わせて自分の言葉で授業担当者へ依頼することにあり,このことが非常に重要であると考えている。一方,コロナ禍においては,ニーズを有する学生から授業担当者への依頼はメールでやりとりとならざるを得ず,障害のある学生自分の言葉で自身のニーズを伝える経験やその結果の振り返りを確認するなど,合理的鍼慮を受ける学生の変化や成長などを把握することはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症の影響を踏まえつつ,支援内容を決定するためのアセスメント内容に関する研究,アセスメント結果のフィードバックとアセスメント結果に基づく支援内容の検討と決定のプロセスに関する研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,新型コロナ感染症の対応として多くの大学でオンライン授業が導入され,障害のある学生の支援に必要となる検査類や機器等の配置を行えなかったことにある。令和4年度は,十分か感染対策をとった上で対面授業の実施も可能となるため,視覚障害のある学生への合理的配慮を実施・検討していく上で必要となる物品等の整備に使用していきたい。
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