研究課題/領域番号 |
20K03021
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
濱田 豊彦 東京学芸大学, 教育学研究科, 教授 (80313279)
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研究分担者 |
高山 芳樹 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10328932)
大鹿 綾 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (10610917)
櫛山 櫻 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 国立看護大学校, 助教 (40722822)
喜屋武 睦 福岡教育大学, 教育学部, 助教 (80827014)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 手話 / 英単語 / 小学校英語 / 継次処理 / 同時処理 / 音韻 |
研究実績の概要 |
本研究は、手話活用児童が英語の音韻(言語単位)を習得し円滑に英語単語学習に取り組めるための条件(要因)を検討し、各自の状況に応じた効果的な指導法のエビデンスを得ることを目的とする。 研究の主要な柱のうち2020年度は1)現在の英語指導に関する実態調査、2)聴覚障害児の日本語の音韻活用能力と英語の音韻習得および英単語習得との関連の分析、3)研究2)に基づく介入研究を主に取り組んだ。しかし、新型コロナ流行の影響を受けて学校での研究が制限を受けた。1)に関しては首都圏の特別支援学校は学校を閉鎖する事態があったため、小学部における英語指導が例年通り(予定通り)に実践できていない中での調査になったため、英語担当教員の体制や指導にあたっての不安は確認されたが、実践に基づく工夫に関しては部分的なものとなった。2)に関しては、直接児童生徒への対面調査が行えなかったために、手話を主たるコミュニケーション手段としている社会人や大学生に対して英単語の学習法と発音や音韻に関して聞き取り調査を実施した。その結果、重度の聴覚障害者でも単語にカタカナの読み仮名を振ることが単語習得に役立ったとするグループと視覚的な形でとらえた方が分かりやすいとしたグループに分かれた。いずれも大学卒業(乃至は在学中)している聴覚障害者であることから本研究の中心仮説である「聴覚障害児・者の音韻意識は必ずしも聴者と一致するわけではないが、言語の分節単位としての音韻の機能を習得できればその後の読み書き能力は円滑に発達していく」を部分的に支持するものと考えている。3)の介入研究に関しては秋に2回対面で実施したが、その後も緊急事態宣言が繰り返されることになり現在オンラインでの取り組みを5人に対して6回試行した。通信状況や教材の共有等の環境整備を行った段階で介入研究としては2021年度以降に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の学術的成果の中心になるのが、重度聴覚障害児の英語学習における音韻形成を明らかにすることである。その手段として、聴児に行われる、音素を入れかえた非単語の聴取弁別や発話弁別による技法は使えないので、習得単語の音節を数えさせる(タッピングさせる)や読み仮名を書かせることで得られた成績と英単語の文字提示での理解および書字、指文字提示での理解および表出の能力の比較を計画をしているが、2020年度は学校で直接子どもたちに関わる技法での調査がコロナ禍で行えなかった。このことが研究を遅らせている原因である。 音韻意識と単語理解等の評価からアンダーアチーバーの児童を抽出する作業もそのために行えておらず、(英語学習で苦労をしているという自己申告による)オンラインでの指導の試行にとどまってしまっている。 2021年度は可能な範囲で聴覚特別支援学校の小学部3~6年および中学部1~3年生(各20名程度)で音韻分解能力や単語書字能力検査を実施したいと計画中である。 また、全国の聴覚特別支援学校を対象とした調査に関しても、(学校が閉鎖されている時期があったため)指導実践を通じての調査が一律には行えなかった。2021年度に再調査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
全国アンケート調査に関しては、聴覚特別支援学校の小学部で英語指導にあたっている教員の協力を得て内容を検討しているところである。今年度から指導にあたっている教員のことも考慮して、秋以降に実施する予定で進めている。 本研究の中核としている音韻検査と英単語理解・書字に関する調査も対面で行うよう計画をしている。ただし新型コロナの感染状況が改善しない時には対面によらず紙面のみによって調査できるよう検討中である。具体的には音韻の数をタップさせることはせず、発音をカタカナで表記させたり単語としての区切りを記入させたりするなどの次善の方法を併せて検討している。 介入研究に関しても対面による指導が行えない場合は、オンラインによる指導を併用する予定であるが、これまでの指導の中で、オンライン指導は児童自身がコンピュータ等の操作にある程度熟達する必要があることと、注意などの課題がある場合に対面指導とは異なる難しさがあることから、限定的な介入にならざるを得ないのではないかと考えている。感染状況の改善が見込めない時には必要に応じて、海外の先進的な英語指導の情報収集を含め、研究計画を2022年度までではなく一年間延長することも考え始めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目に実施する予定の調査が部分的なものにとどまったのは、聴覚特別支援学校で小学部等で英語を担当する教員の意見(特に音韻指導上の困難や工夫)を反映したものにしたかったが、新型コロナ感染症の影響で聞き取り調査ができなかったためである。その分の費用を繰り越し2021年度に利用する予定である。 また、コロナ禍で1年目は学校の中で児童生徒に対面をしての調査ができなかったが、次年度は現職教員にも協力を得ながらのデータ取集を行う計画をしている。そのための費用も繰り越して使用する予定である。
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